ウィッグ(かつら)使用者にとって、逮捕・勾留されて留置場に入ることになってしまった時に、ウィッグ(かつら)がどうなるか、とても気になることと思います。
- 「留置場でウィッグ(かつら)は使えるの?」
- 「ウィッグ(かつら)を外した場合の保管はどうなるの?」
- 「外したウィッグ(かつら)は宅下げできるの?」
- 「留置場に入る前にウィッグ(かつら)を外しておきたいけど、いつ逮捕されるか分かるの?」
- 「留置場にウィッグ(かつら)会社の人に地毛のカットとメンテナンスをしに来てほしいのだけど、可能?」
- 「ウィッグ(かつら)専用のシャンプーやコンディショナーを持ち込んだり、差し入れたりすることは出来るの?」
- 「ウィッグ(かつら)専用の櫛を持ち込むことや差し入れることは出来るの?」
このようなウィッグ(かつら)使用者ならではの疑問もきっと持つことでしょう。
この記事では、ウィッグ(かつら)使用者やそのご家族または知人が、留置場に入った時にウィッグ(かつら)がどうなるのか。使えるのか、使えないのか等々……。
その実際について、実際に留置場での勾留経験者から聞いた体験談を踏まえてお話ししていきます。
留置場でウィッグ(かつら)は使えるの?
結論から言えば、留置場でのウィッグ(かつら)使用は可能です。ただし、いくつかの制限があります:
留置担当官の許可が必要
ウィッグ(かつら)を留置場内で装着するには、留置場担当官の許可が必要です。
逮捕された時や、留置場に入る際の荷物検査の際に申し出てください。
ウィッグ(かつら)については法令にて以下のように定められています。
(法第四十二条第一項第五号に規定する法務省令で定める物品)
第十七条 法第四十二条第一項第五号に規定する法務省令で定める物品は、次に掲げる物品とする。
一 印紙及び印鑑
二 かつら(法第百六条の二第一項の規定により外出し、又は外泊する場合、裁判所に出頭する場合その他の刑事施設の長がかつらの着用を許すことが適当と認める場合に限る。)
外出、裁判所出頭時など、特定の場合に限って許可されるケースもあります。
留置場内での使用は24時間着用が原則
ウィッグ(かつら)の着用が許可された場合は、基本的に24時間着用が原則です。
就寝時や入浴時も含めた着用となります。
ウィッグ(かつら)の保管と管理
ウィッグ(かつら)を外した場合の保管
- 留置場内での使用が許可された場合は、基本的に外すことは想定されていません。
- 許可されなかった時や、留置場に入る際にウィッグ(かつら)を外して預けた場合は、他の荷物と同様に留置場にて保管されます。
ウィッグ(かつら)の宅下げについて
- 面会時や弁護士との接見時に宅下げすることが可能です。
逮捕前の備えについて
「いつ逮捕されるかわからないが、ウィッグをつけていて大丈夫か?」と心配している人もいるかもしれません。以下の情報を参考になさってください。
逮捕される前にウィッグ(かつら)を外す準備は出来るのか?
逃亡を防ぐため、逮捕のタイミングは基本的に秘匿されます。
そのため、逮捕のタイミングを予測するのは困難です。
逮捕前にウィッグ(かつら)を外しておくべき?
- 方針を決める:留置場内でウィッグをつけたままにするのか、外して留置場に行くようにするのか。どちらにするかあらかじめ方針を決めておきましょう。
ただし、不起訴または保釈されなければ、留置場から拘置所、有罪判決が出たら刑務所に行くことになるケースもあります。最悪のケースも視野に入れて考えておきましょう。 - 装着方法を変更する(留置場内でウィッグ(かつら)を使わない方向けの方法):貼り付けや編み込みなど、24時間装着のウィッグ(かつら)を使用している場合は、金属ピンやテープでの装着に変更して、逮捕時に取り外せるようにしておくとスムーズな対応が可能になります。
- 突然の逮捕に備えて外しておく:ほとんどの場合、逮捕・勾留時に警察官がウィッグを外すよう求めてきます。そのため、あらかじめ外しておくとスムーズです。
- 自首を考えている場合:以下の3つの方法が取れます。
- 留置場内でもウィッグ(かつら)を使うので、装着したまま生活する。
- 自首するタイミングに合わせてウィッグ(かつら)を外す。
- 金具やテープでの装着に変更して、いつでも取り外しできるようにしておく。
逮捕されることが考えられる場合は、この中のいずれかの対応を取るといいでしょう。
ウィッグ(かつら)のメンテナンスについて
ウィッグ(かつら)は本来メンテナンスが必須な物ですから、留置場内での実情はとても気になることと思います。留置場でのウィッグ(かつら)のメンテナンスについては、以下のような取り扱いになります。
- 専門家によるメンテナンス
- ✖️:外部の専門家による、留置場内でのメンテナンスは認められません。
- シャンプー・コンディショナー
- ✖️:ウィッグ(かつら)専用製品の持ち込みや差し入れは原則として不可です。
- 施設提供の一般的なシャンプーを使用することになります。
- コンディショナ―は使用できません。
- ウィッグ(かつら)専用の櫛(くし)
- ✖️:安全上の理由から、ウィッグ(かつら)専用の櫛(くし)の持ち込みは通常認められません。
- そもそも、留置場内では、櫛を利用すること自体ができません。
結論として、留置場内ではウィッグ(かつら)のメンテナンスが出来ません。
留置場でのウィッグ(かつら)を使用する際の注意点
- ウィッグ(かつら)の衛生管理
- 5日に1回または週2回の入浴時に洗髪をすることしか出来ません。
- 臭い防止のためにも、定期的な洗髪が必要となります。
- ウィッグ(かつら)のヘアスタイルの変更
- 専門家を呼ぶことも出来ず、また理容師や美容師の出張もほとんどの留置場では利用できないため、結果的にヘアスタイルの変更は出来ません。
出張サービスが利用できる留置場での勾留になったとしても、ハサミを用いずにバリカンを使用して短くしてくれる程度です。
そのため、結果的にウィッグ(かつら)のスタイル変更は出来ません。
- 専門家を呼ぶことも出来ず、また理容師や美容師の出張もほとんどの留置場では利用できないため、結果的にヘアスタイルの変更は出来ません。
- ウィッグ(かつら)のプライバシーについて
- 留置場担当官が他の被留置者に公表することはありません。
- 留置場内ではメンテナンスが出来ないため、長期の勾留になった際に、地毛が伸びてきたり、白髪が増えたりすることで、同室のメンバーにバレてしまうことはあるようです。
- 途中で外したくなった時
- 途中でウィッグ(かつら)を外したくなった際は、運動時または入浴の時間帯にバリカンでの自己調髪(要は丸刈り)の時間があります。その時に外して、留置担当官に外したウィッグ(かつら)を渡すといいでしょう。ただし、編み込みの場合は、破損リスクがありますし、接着の場合は、接着剤が緩むまでそもそも外せない可能性があります。
留置場でウィッグ(かつら)を使った方が良い? 悪い?
留置場でのウィッグ(かつら)を利用することは出来ますが、あまりオススメできません。その理由は以下の通りです。
- ウィッグ(かつら)が痛む
- メンテナンスが出来ない:勾留中はメンテナンスが出来ないので、傷みやすくなります。また、痛んだ時の補修も出来ません。
- 一般のシャンプーしか使えない:ウィッグ(かつら)メーカーによっては、専用のシャンプー・コンディショナーを推奨しています。ですが、許可されないので、傷みやすくなります。
- 櫛を使うことができない:髪の毛のほつれが起きてボサボサになります。
- かゆみや湿疹などの皮膚トラブル発生リスク
- 洗髪が出来るのが5日1回(夏期は週2回)だけなので、不衛生になりやすく、かゆみや湿疹が出来やすくなります。
- 編み込みの場合は、ウィッグ(かつら)に編み込んでいる部分に痒みが出やすく、体質によっては膿んだりすることもあり得ます。
- 接着型の場合は、そもそもかゆみが出やすいうえに、洗髪の回数も少ないため、かゆみや湿疹などの皮膚病リスクが高いです。
- バレるリスク
- 櫛は使えませんし、鏡もほとんど見ることができません。また、フロント部分をテープまたは接着剤での固定している方の場合は、そこが緩んでしまいバレるリスクが高まります。
- 通常であれば、逮捕から最大23日の勾留ですが、再逮捕があったり、起訴されて保釈されなかった場合は、さらに長期間勾留されます。その場合は、地毛がかなり伸びてしまうので、バレやすくなります。
留置場でウィッグ(かつら)を利用した方の体験談
留置場経験者の中に、ウィッグ(かつら)利用者がいたので、その内容を共有します。
- ウィッグ(かつら)の装着方法は?
- 編み込みでした。
- 何日くらいいましたか?
- 連続で60日くらいいました。
- ウィッグ(かつら)だとバレなかった?
- ほとんどの人にはバレませんでしたが、同室の若者にバレてしまいました。
- バレた時はどうしたの?
- 同室の他の人にもカミングアウトして、ネタにしました。
- いじめられたりしませんでした?
- その時の部屋のメンバーはいい人たちだったので、大丈夫でした。
- かゆみとかは出ましたか?
- お風呂に入れないので、かゆみはひどかったです。湿疹も高頻度で出てしまいました。
- 対策は何か取りました?
- いえ。対策をとることは出来ませんでした。我慢するしかありませんでした。
- 他に気になったことはありましたか?
- メンテナンスも出来ないので、ウィッグ(かつら)が痛んでしまいました。高いものなので悔しい思いをしました。
- ウィッグ(かつら)を途中で外そうとは思わなかったんですか?
- 勾留が長くなったので、編み込み部分の髪が伸びてしまい、ウィッグ(かつら)がかなり緩んでしまったので、40日目くらいから外すかどうかかなり悩みました。幸い、60日くらいで出られたので外さずに済みました。
- ウィッグ(かつら)を外す外さないを判断するに当たっては、どのようなことに悩んだんですか?
- バリカンで丸刈りにする時に、外そうと思っていましたが、ウィッグ(かつら)を壊してしまいそうで決断できませんでした。
- あとは、外したウィッグ(かつら)は留置場で保管してくれますが、洋服と同じような保管方法になるので、型崩れして、結局使えなくなることを恐れました。
- 外したら、すぐに宅下げ出来るようにタイミングを合わせなくてはいけないと思いましたが、こちらからの連絡は手紙か弁護士接見時しかなったので、調整が難しかったです。
- 他にウィッグ(かつら)を使っていた人はいましたか?
- はい。直接話した訳ではありませんが、一人いました。その人はバレてはいなかったと思いますが、ウィッグ(かつら)ユーザー同士だと丸わかりでした。
まとめ
ウィッグ(かつら)使用者にとって、逮捕・勾留され、留置場で過ごすことになった時、ウィッグ(かつら)をどうするか、とても悩むことでしょう。
留置場でのウィッグ(かつら)の取り扱いについて、まとめると以下のようになります。
- 留置場でウィッグ(かつら)は使うことができる
- 24時間装着限定。外すことは警察官から推奨される
- ウィッグ(かつら)のメンテナンスは出来ない
- ウィッグ(かつら)が痛むリスクが高い
- かゆみや湿疹などの皮膚トラブルが起きやすい
この記事が、留置場でのウィッグ(かつら)に関する疑問や不安を解消する一助となれば幸いです!
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