「勾留延長」とは?留置場での流れと意味を徹底解説

逮捕されて留置場に入ったあと、「勾留延長」という言葉を耳にすることがあります。

家族や友人が留置場に入り、「勾留延長になった」と聞いて不安になった方も多いのではないでしょうか?

この記事では、「勾留延長」の意味から手続きの流れ、延長される理由まで、わかりやすく解説していき、留置場での生活や今後の見通しについて不安を抱えている方の疑問に答えていきます。

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勾留延長とは?基本的な意味を解説

勾留延長とは、被疑者(容疑者)を留置場などで身柄を拘束する「勾留」の期間を、通常の10日間からさらに最長10日間延長することです。

勾留延長については、刑事訴訟法において以下のように定められています。

第二百八条 第二百七条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
② 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

出典:e-GOV 法令検索 刑事訴訟法第二百八条より引用

勾留とは、逮捕後に検察官が裁判官に請求し、裁判官が認めた場合に行われる身柄拘束のことです。逮捕から勾留までの基本的な流れは以下のとおりです:

  1. 逮捕(最長72時間)
  2. 勾留請求(検察官が裁判官に請求):逮捕から48時間以内
  3. 勾留質問(裁判官による審査):勾留請求から24時間以内
  4. 勾留決定(最長10日間)
  5. 勾留延長請求(検察官が必要と判断した場合)
  6. 勾留延長決定(最長さらに10日間)

つまり、勾留延長とは、すでに勾留されている被疑者の身柄拘束期間を延ばす手続きなのです。

👉勾留と逮捕の違いについて:詳しくはこちら>> 勾留とは?逮捕後の流れや期間、勾留の意味を徹底解説!

勾留期間はどのくらい?延長されると何日になる?

勾留期間と勾留延長によってどれだけ留置場にいることになるのか、具体的な日数を見ていきましょう。

通常の勾留期間

通常、勾留期間は最長10日間です。逮捕から72時間(3日間)を経た後、裁判官が勾留を決定すると、この10日間の勾留が始まります。

勾留延長後の期間

勾留延長が認められると、さらに最長10日間拘束期間が延びます。つまり、逮捕(最長3日)+勾留(10日)+勾留延長(10日)で、最長で23日間も身柄を拘束されることになります。

実際の日数は以下のようになります:

段階最長期間累計日数
逮捕72時間(3日)3日
勾留10日13日
勾留延長10日23日

逮捕からの具体的なタイムライン

実際の流れを日付で見てみましょう:

  • 1月1日:逮捕
  • 1月3日:勾留請求(検察官が請求を行う)
  • 1月4日:勾留決定(勾留質問を経て裁判官が決定する)
  • 1月14日:通常の勾留期間終了
  • 1月14日:勾留延長決定(検察官の請求を受け、裁判官が決定する)
  • 1月24日:勾留延長期間終了(この時点で起訴か釈放)
  • 起訴された場合 1月25日〜1月31日頃:保釈
  • 保釈できなかった場合 2月3日頃:拘置所に移送

この23日という期間は、日本の刑事司法制度の特徴の一つで、国際的に見ても長い部類に入ります。

勾留延長は誰が判断する?裁判官の役割

勾留延長を判断するのは裁判官です。具体的なプロセスは次のとおりです:

  1. 検察官による請求:検察官が勾留期間の延長が必要だと判断すると、裁判官に勾留延長を請求します。
  2. 裁判官による審査:裁判官は検察官の請求内容や理由を審査します。
  3. 勾留延長の可否決定:裁判官は審査の結果、勾留延長の可否を決定します。

勾留延長を判断する際、裁判官は以下の点を考慮します:

  • 事件の重大性
  • 証拠隠滅のおそれ
  • 逃亡のおそれ
  • 捜査の進捗状況
  • 被疑者の健康状態

裁判官の判断基準

裁判官は「やむを得ない事由」があると認める場合に限り、勾留延長を認めます。実務上は、検察官の請求のほとんどが認められているのが現状です。

日本における勾留延長却下率 0.2%

2023年、被疑者の勾留期間延長の請求を受けて、裁判官が勾留期間延長を許可したのは6万2080人(99.8%)であるのに対し、却下したのは155人(0.2%)である。

出典:日本弁護士連合会 統計から見える日本の刑事司法 逮捕に関する統計より引用

勾留延長になる理由とは?よくあるケース

勾留延長が認められる理由には、いくつかの典型的なパターンがあります。

1. 事件が複雑で捜査に時間がかかる場合

  • 共犯者が多数いる事件
  • 被害が広範囲に及ぶ事件
  • 証拠が大量にある事件
  • 専門的な分析が必要な事件(例:経済犯罪、サイバー犯罪など)

2. 証拠隠滅のおそれがある場合

  • 共犯者との口裏合わせが疑われる
  • 証拠を破棄する可能性がある
  • 証人に圧力をかける恐れがある

3. 逃亡のおそれが強い場合

  • 国外に逃亡しやすい環境がある
  • 過去に逃亡歴がある
  • 定住先が不安定である

4. 供述や証拠の信憑性を確認する必要がある場合

  • 供述に矛盾があり、裏付け捜査が必要
  • 新たな証言や証拠が出てきた
  • アリバイの確認が必要

実際の事例では、複数の要素が組み合わさって勾留延長が認められるケースが多いです。

勾留延長の決定はどう伝えられる?

勾留延長が決定すると、被疑者(容疑者)には以下のような流れで通知されます:

  1. 裁判官による決定:裁判所が勾留延長を決定
  2. 書面による通知:「勾留延長決定書」が作成される
  3. 被疑者への告知:留置場の担当官から被疑者に告知される
  4. 弁護人への通知:弁護人がいる場合は弁護人にも通知される

実際の告知の様子

多くの場合、地方検察庁(地検)から帰ってくるバスと共に「勾留延長決定書」が留置担当官に届けられます。

留置場では、通常、担当警察官が被疑者の居室に来て、「勾留が延長されました」と伝えます。その後、勾留延長決定書の内容を説明し、延長期間を伝えます。

具体的な会話例:

担当官:「〇〇さん、裁判所から勾留延長の決定が出ました。さらに10日間、勾留期間が延長されます」
被疑者:「いつまでですか?」
担当官:「1月24日までです」

この通知は淡々と事務的に行われることが多く、理由の詳細説明はあまりありませんが、質問すれば一般的なことについては答えてくれます。ただし、細い不明点は弁護人に確認するのがベターです。

勾留延長されないケースはある?

すべての事件で勾留延長が認められるわけではありません。以下のようなケースでは勾留延長が認められないことがあります:

1. 軽微な事件の場合

  • 初犯で罪が軽い場合
  • 被害額が少ない窃盗や詐欺など
  • 暴行・傷害でも軽傷の場合

2. 証拠が十分に集まっている場合

  • 現行犯逮捕で証拠が明白
  • すでに自白している
  • 物的証拠が十分にある

3. 社会的な要素が安定している場合

  • 安定した住居・職業がある
  • 家族のサポートがある
  • 社会的信用が高い

4. 起訴の判断がすでについている場合

  • 捜査が順調に進み、起訴するかどうかの判断材料が揃っている
  • 不起訴処分にすると決まっている

実際の統計では、勾留請求の96.2%以上が認められ、勾留延長請求も99.8%と高い確率で認められています。しかし、上記のようなケースでは認められないこともあります。

勾留延長に対抗する方法はある?

勾留延長に対抗する方法はいくつかあります。以下に主な方法を紹介します:

1. 準抗告(じゅんこうこく)

勾留延長決定に対して不服がある場合、「準抗告」という手続きで争うことができます。

  • 申立期間:勾留延長決定があったことを知った日から3日以内
  • 申立先:勾留延長を決定した裁判官が所属する裁判所
  • 判断する裁判官:元の決定をした裁判官とは別の裁判官3名により即日判断される

ただし、準抗告が認められるケースは実務上かなり限られています。

2. 勾留理由開示請求

勾留(または勾留延長)の理由について、開示を請求することができます。

  • 請求できる人:被疑者本人、弁護人、法定代理人、配偶者、直系の親族など
  • 開示の方法:裁判所で口頭で説明される
  • 意義:勾留の理由を知ることで、今後の対応策を検討できる

3. 勾留取消請求(勾留の必要性がなくなった場合)

勾留延長後でも、以下のような事情があれば勾留取消を請求できます:

  • 健康状態の悪化
  • 証拠隠滅や逃亡のおそれがなくなった
  • 家族の介護などの事情が発生

4. 弁護士による交渉

弁護士が検察官と交渉し、起訴猶予や示談などの方向性を探る方法もあります。弁護士の存在は非常に重要です。

家族ができること:勾留延長期間中のサポート方法

家族や友人として、勾留延長された方をサポートするためにできることをご紹介します。

1. 面会に行く

  • 留置場での面会は通常、平日の決められた時間に可能です
  • 身分証明書を持参し、事前に警察署に連絡するとスムーズです
  • 精神的な支えとなる言葉をかけることが大切です

2. 差し入れをする

  • 衣類、書籍、日用品などの差し入れが可能です
  • 留置場によって多少ルールが異なるため、事前に確認が必要です
  • 季節に合った下着や靴下は特に喜ばれます

3. 手紙を送る

  • 手紙は心の支えになります
  • 写真や絵などを同封することも可能です。
  • 前向きな内容を心がけましょう

4. 弁護士と連携する

  • 家族から弁護士に情報提供をすることで、弁護活動がスムーズになります
  • 被疑者の性格や仕事、家庭環境などの情報が役立ちます
  • 定期的に弁護士から状況を聞くようにしましょう

5. 出所後の環境を整える

  • 仕事の状況確認や休職手続きなどを行う
  • 住居の家賃支払いなどの生活基盤を維持する
  • 周囲への適切な説明を考えておく

家族のサポートは、被疑者の精神的な支えになるだけでなく、裁判所が身柄拘束の必要性を判断する際にも影響することがあります。

まとめ:勾留延長を乗り切るために

勾留延長は、被疑者にとっても家族にとっても不安や苦痛を伴うものです。しかし、適切な知識と対策を持つことで、この期間を乗り切ることができます。

勾留延長のポイント

  • 勾留延長は最長10日間で、通常の勾留と合わせると最長20日間となる
  • 勾留延長の判断は裁判官によって行われる
  • 事件の複雑さや証拠隠滅のおそれなどが延長の理由となる
  • 弁護士を通じて準抗告などの対抗手段を検討できる
  • 家族のサポートが精神的な支えになる

今後の流れ

勾留延長期間が終わると、以下のいずれかの結果になります:

  1. 起訴:公判(裁判)に進む。起訴後、保釈されることもあります。
  2. 不起訴:釈放されます。
  3. 処分保留:いったん釈放されるが、後日処分が決まります。

勾留延長は辛い時間ですが、必ず終わりがあります。適切な知識と心構えで、この期間を乗り越えましょう。

留置場や勾留に関する情報は複雑で、不安を感じる方も多いと思います。当サイト「Behind Doors」では、留置場や刑事司法に関する様々な情報を提供しています。不明点や疑問があれば、ぜひ他の記事もご覧ください。

あなたやあなたの大切な人が、この困難な時期を乗り越えられることを願っています。


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