匿名・流動型犯罪グループ（匿流・トクリュウ）とは？ 特徴・被害・対策を徹底解説

近年、ニュースやSNSで「匿名・流動型犯罪グループ」「匿流」「トクリュウ」という言葉を目にする機会が増えています。

この新たな形態の犯罪組織について知ることは、自分や大切な人を守るために重要です。この記事では、トクリュウ（匿流）の実態から被害対策、関与してしまった場合の対応まで、包括的に解説していきます。

トクリュウ（匿流）とは何か

「匿名・流動型犯罪グループ」（通称：匿流/トクリュウ）とは、従来の暴力団やマフィアとは異なる、新たなタイプの犯罪組織を指します。

名前の通り「匿名性」と「流動性」を特徴とし、固定的な組織構造を持たず、メンバーの出入りが流動的であることが特徴です。

トクリュウ（匿流）の歴史的背景

トクリュウ（匿流）の台頭は、以下の社会的背景と関連していると考えられています：

1. 暴力団対策法の強化による伝統的暴力団の弱体化
2. インターネットやSNSの普及による匿名コミュニケーションの容易化
3. 経済格差の拡大と若年層の経済的不安定さ
4. コロナ禍による社会的孤立の深刻化

トクリュウ（匿流）の組織構造と特徴

トクリュウ（匿流）組織構造

大きくは、以下のような3層構造の役割分担となっています。組織の規模によっては、さらに細分化されることがあります。

1. 指示役：SNSで実行役を募集し、犯罪計画を立案します。
2. 勧誘役：闇バイト広告を拡散し、新たなメンバーを獲得します。
3. 実行役：実際に現金受け取りや強盗を実行します。

また、トクリュウ（匿流）の最大の特徴は、従来の階層型組織構造ではなく、「ネットワーク型」の組織形態を採用している点にあります。その特徴をまとめると以下のようになります。

• 中心人物（コアメンバー） – 実質的なリーダーが存在するものの、表立って姿を現しません。
• セル構造 – 小規模なグループ（セル）が独立して活動し、全体像が見えにくくなっています。
• 役割分担の明確化 – 勧誘係、資金管理係、実行係など役割が細分化されています。基本的には前述したような３層構造を取りますが、規模が大きくなればなるほど、役割が細分化していきます。
• 一時的結合 – 特定の「案件」ごとにチームが組まれ、終了後は解散します。

トクリュウ（匿流）の特徴

1. 匿名性の重視
   • 首謀者や指示役の素性がバレないように、実行役に対して匿名（偽名やハンドルネームなど）を用います。
   • その際に、秘匿性の高いSNS（SignalやTelegramなど）を用いて、摘発を逃れています。
   • SNSやアカウント名を利用し、実名を隠すことで匿名性を保っています。
   • 指示はSNSを通じて行われ、対面での接触を極力避けることで、首謀者や指示役の摘発を逃れています。
2. 高い流動性
   • 首謀者や指示役がSNSや求人サイトを用いて実行役を集め、犯罪ごとに実行役が集められ、案件終了と共に解散します。
   • 上記のように実行役を常に入れ替えることで摘発を回避しています。
   • 指示は主にSNSを用いているため、特定のテリトリーに縛られない広域的活動が可能で、捜査範囲を絞らせないようにしています。
3. デジタル技術の活用
   • 秘匿性の高いメッセージアプリ（主にSignalやTelegramなどのSNS）を使用し、警察の摘発を逃れようとしています。
   • SignalやTelegramなどのSNSを用い、マネーロンダリング（マネロン）の証拠を消しながら、資金移動をします。

     • トクリュウ（匿流）のマネーロンダリング（資金洗浄）については、こんな事例も！

       ＳＮＳで協力者を募り、報酬を払って金融機関に約４０００の法人口座を開設させた。それらの口座を使って資金を次々と移し替え、犯罪収益だと特定されないようにしていた。

       資金洗浄の総額は、少なくとも７００億円に上るとみられている。

       出典：読売新聞オンライン 社説（2024年6月3日）

   • SNSや求人サイトを使った、実行役の巧妙な勧誘活動が特徴です。
4. 細分化
   • 実行役や指示役など、メンバー同士の役割が細分化されています。

トクリュウ（匿流）の主な犯罪活動

トクリュウ（匿流）が関与する主な犯罪活動には以下のようなものがあります：

特殊詐欺

• オレオレ詐欺
• 還付金詐欺
• ロマンス詐欺
• 投資詐欺（SNS型投資詐欺）
• ギフトカード詐欺

サイバー犯罪

• フィッシング詐欺
• ランサムウェア攻撃
• オンラインバンキングの不正アクセス
• SNSアカウントの乗っ取り

薬物関連犯罪

• 違法薬物の密売
• 危険ドラッグの製造・販売
• 処方薬の不正流通

その他の犯罪活動

• 窃盗・強盗
• 恐喝
• 個人情報の売買
• 偽造書類の作成・販売
• 風俗営業（悪質ホストクラブや風俗スカウトなど）
• リフォ―ムや屋根の点検商法

トクリュウ（匿流）の勧誘手法

主な勧誘のターゲット

トクリュウ（匿流）が勧誘ターゲットとしやすい層には以下のような特徴があります：

• 経済的に困窮している若年層
• 社会的に孤立している人
• 借金を抱えている人
• 学生や非正規雇用者
• SNSを頻繁に利用する人

典型的な勧誘パターン

1. SNSを通じた接触
   • 「簡単に稼げる」「楽に儲かる」などの甘い言葉で誘ってきます。
   • 「日給5万円」など高報酬案件は危険です。
   • 高級車や高級品の写真を見せて憧れを抱かせます。以下のような事例があります。

   • 「教育システムがしっかりしてる、3か月もあれば1000万のレールに乗れる。年収1000万のレールに、間違いなく乗れる」
     さらに若者に対して、「俺の仲間になるのが一番早いと思う」などと投稿。
     
     SNSの募集広告には…
     
     『年収1億円可能』
     『付いてくれば月収100万円超は約束します！』
     
     こうして従業員を募集し、斎藤容疑者が自宅などで面接や研修を行っていたとされています。出典：『年収1億円可能』屋根の“点検商法”で逮捕の男、「トクリュウ」リーダーか　現金払いで履歴工作か

2. 段階的な勧誘（段階を踏まない場合も多い）
   • 最初は合法的な小さな仕事から始める場合があります。
   • 普通の求人・就職と思っているうちに、個人情報を抑えられ、徐々に違法性の高い活動へと誘導されてしまいます。
   • 「借金の返済」や「生活費」など切羽詰まった状況も利用されます。
3. 依存関係の構築
   • 金銭的な依存を作り出す
   • 脅迫や恐喝で抜けられなくします。
   • 多くは、個人情報を抑えられ、自身や家族、知人に対しての報復をちらつかされます。
   • 場合によっては、「仲間意識」「家族のような絆」を強調される場合もあります。

トクリュウ（匿流）の被害に遭わないための対策

予防策

1. SNSでの警戒
   • 突然の友達申請や過度に親密なメッセージに注意
   • 「簡単に稼げる」「大金を得られる」といった誘いを信じない
   • 個人情報の公開を最小限に抑える
2. 情報リテラシーの向上
   • 怪しい情報やオファーを見極める力を養う
   • 公的機関や警察の発信する注意喚起に目を通す
   • 家族や友人と不審な誘いについて相談する習慣をつける
   • 場合によっては、警察などの相談窓口を利用する。
3. 金銭管理の徹底
   • 借金を避け、健全な金銭管理を心がけましょう。
   • 投資や副業の話には慎重に対応しましょう。
     • 特にリターンの多い投資話は大半が詐欺です。
     • また、リスクの説明が緩いものも大半が詐欺です。
     • 「みんなやっている」「私もこんなに稼いだよ」というのは大半詐欺です。
       • HYIP(ハイプ)案件のものに多い勧誘方法です。
         その中でも特にポンジ・スキームと言われ、投資家から集めたお金を運用せずに、新しい投資家からの資金を配当に回すというものに多く見られます。
         初めは配当するものの、すぐにシステム調整などの名目で資金を引き出せなくした後に、会社が無くなります。
         低リスク・高配当はあり得ませんので、ご注意ください。
   • 経済的に困ったときの相談先を知っておくといいでしょう。

トクリュウ（匿流）の被害に遭ってしまったときの対応

1. 証拠を保存する
   • メッセージや通話記録などを保存しましょう。
   • 自動で消えてしまうものが多いので、スクリーンショットでも大丈夫です。
   • 取引履歴や振込記録を残しておくといいでしょう。
   • 録音や録画も有効です。
2. すぐに警察に相談する
   • 警察が運営している「匿名通報ダイヤル：0120-924-839」を利用する
   • 警察の相談ダイヤル「#9110」に電話して相談する
3. 周囲のサポートを求める
   • 家族や信頼できる友人に状況を打ち明けるのも大切です。一緒になって危機を乗り切りましょう。
   • 必要に応じてカウンセリングなどの心理的サポートも受けるといいでしょう。

トクリュウ（匿流）に関与してしまった場合の対応

自首を考える際のポイント

関与してしまった場合、早期に自首することで情状酌量が認められる可能性があります：

1. 弁護士への相談
   • 自首前に弁護士に相談することが重要です。
   • 具体的な状況に応じた適切なアドバイスを受けられるはずです。
2. 証拠の保全
   • 組織の活動や構造に関する情報を整理しておくといいでしょう。
   • 組織の解明に貢献することで、情状酌量につながりやすくなります。
   • メッセージのやり取りや指示内容など、証拠となる資料を保管しましょう。
3. 協力姿勢の示し方
   • 捜査への全面的に協力しましょう
   • 被害者が出てしまっている場合は、被害回復への誠意ある対応をしましょう。

トクリュウ（匿流）からの脱退を考える際の注意点

1. 安全確保の優先
   • 何よりも安全の確保が大切です。
   • 弁護士に相談の上、必ず警察に助けを求めましょう。
   • 脅迫や報復の可能性を考慮する必要があります。警察に相談することで、対策を取ることが可能です。
2. 環境の変化
   • 連絡先やSNSアカウントの変更も有効です。
   • 場合によっては居住地の変更も検討しましょう。
   • いずれにしても、弁護士や警察と相談しながら行いましょう。
3. 再建のための支援
   • 自首後、刑事事件の手続きが終了したら、就労支援や生活再建のためのサポートを利用しましょう。
   • PTSDなどへの心理的なケアや依存からの回復支援を受けることも大切です。

トクリュウ（匿流）で検挙された場合の法的処遇

適用される可能性のある法律

トクリュウ関連の犯罪で摘発された場合、以下のような法律が適用される可能性があります：

1. 詐欺罪（刑法第246条）

• 10年以下の懲役

1. 窃盗罪（刑法第235条）

• 10年以下の懲役または50万円以下の罰金

1. 恐喝罪（刑法第249条）

• 10年以下の懲役

1. 組織的犯罪処罰法

• 通常の刑罰より重い処罰の可能性

1. 麻薬特例法・覚醒剤取締法

• 薬物関連犯罪の場合に適用

量刑の目安

実際の量刑は以下の要素によって大きく変わります：

• 犯罪の種類と重大性
• 組織内での立場（指示役か実行役か）
• 前科の有無
• 反省・更生の態度
• 被害回復への努力
• 捜査への協力度合い
• 自首の有無
• 被害額

具体的には弁護士に相談しましょう！

留置場（留置所）・拘置所での勾留期間

トクリュウ（匿流）による犯罪で逮捕された場合、どれくらい留置場（留置所）や拘置所で勾留されるのでしょうか？

以下に逮捕からの流れを簡単に記載していきます。

1. 逮捕から起訴までの流れ
   • 逮捕後42時間以内に検察官送致されます。
     • 裁判所に対して勾留を請求するか判断します
   • 検察の勾留請求から24時間以内に、裁判所に送致されます。
     • 裁判官が10日間の勾留の可否を判断します。
     • 勾留場所は留置場（留置所）となります。
       • 👉 詳しくはこちら >> 留置場とは？ 知っておきたい基本情報と疑問を徹底解説
   • 勾留期間は10日間（最大20日間）の勾留が可能です。
     • 逮捕後からカウントすると最大23日間の勾留（身柄拘束）となります。
   • 複数の犯罪（余罪）で再逮捕される場合もあります。
     • 再逮捕された場合は、さらに最大23日間、留置場（留置所）にて勾留（身柄拘束）されます。
2. 起訴後の勾留
   • 保釈が認められない場合、裁判終了まで勾留されます（起訴後勾留）。
     • 起訴から概ね10日ほどで、留置場（留置所）から拘置所に移送されます。
   • 組織犯罪の場合、共犯者との口裏合わせ防止のため保釈が認められにくいです。
   • 👉 詳しくはこちら >> 起訴後の勾留と保釈制度：被告人勾留の期間と釈放の可能性を徹底解説
3. 実刑判決の場合
   • 確定判決後、拘置所から刑務所へ移送されます。
     • 刑確定後に拘置所から刑務所に移送されるのに10日〜14日ほどかかります。

家族や知人がトクリュウ（匿流）に関与している可能性がある場合

兆候と注意サイン

以下のような変化に気づいたら、トクリュウ（匿流）への関与を疑う必要があるかもしれません：

1. 生活スタイルの突然の変化
   • 不自然な高額出費
   • 収入源が不明確なのに金遣いが荒くなる
   • 夜間の外出が増える
   • 連絡がつかないことが増える
2. 行動や態度の変化
   • 不審な電話やメッセージが増える
   • 質問に対して曖昧な回答や嘘をつく
   • 必要以上に警戒心が強くなる
3. 人間関係の変化
   • 従来の友人との交流が減る
   • 新しい知り合いについて詳しく話さない
   • 家族との時間を避けるようになる
   • 家出をしている

そのような変化があった際には、行動や電話の内容に気をつける必要があります。

確度が高いようであれば、弁護士または警察に相談するといいでしょう。

対応方法

1. コミュニケーションの維持
   • 非難せず、オープンな対話を心がける必要があります。
     • 非難してしまうと、感情的になってしまい、喧嘩になったり、家出をしてしまったりして、有効な解決策に繋がらないことがあります。
   • 信頼関係を崩さないよう注意しましょう。
     • 上記と同様です。支えたい時ほど忍耐が必要となります。
2. 専門機関への相談
   • 警察の相談窓口を利用しましょう。
     • 警察の匿名通報ダイヤル：「0120-924-839」
     • 警察の相談ダイヤル「#9110」
   • 弁護士や法律相談サービス
     • 初回相談無料サービスなどを利用するといいでしょう。
3. 具体的な支援の提案
   • 法的支援の情報提供をするのもいいでしょう。
   • 精神的に不安定であれば、心理的サポートや治療プログラムの案内も有効です。
   • 将来への不安は、自首への足を遠ざけてしまいます。ですから、刑事事件終了後の就労や生活再建のための選択肢の提示は、自首をするにあたりとても大切です。

トクリュウ（匿流）と留置場（留置所）

トクリュウ（匿流）メンバーの留置場での扱い

1. 同種事件での分離
   • 情報交換や口裏合わせを防止するため、共犯者は原則として別の留置場（留置所）に収容されます。
2. 処遇上の配慮
   • 基本的には他の被留置者と同じように扱われます。
   • 組織的背景は留置場場所や部屋割りに考慮されます。

留置場でのトクリュウ（匿流）関係者との接触

一般的に、留置場では以下のような対応がとられます：

1. 容疑内容による分離
   • 犯罪の性質や前科によって収容区分が分けられる場合があります。
2. 相部屋になる可能性が高い
   • 他の被留置者と同じ扱いになるため、基本的に相部屋になります。
   • ただし、共犯関係にある者や知り合いと思われる人は別の留置場に収容されます。

よくある質問

Q1: トクリュウ（匿流）に勧誘されたらどうすればいいですか？

A1: まず、その誘いに応じないことが重要です。「考えておく」などと曖昧な返事をせず、きっぱりと断りましょう。不審な勧誘はすぐに警察や消費生活センターに相談することをおすすめします。

Q2: 知らずにトクリュウ（匿流）の犯罪に加担してしまった場合でも罪に問われますか？

A2: 「知らなかった」という事情は考慮される可能性はありますが、基本的に犯罪行為に加担した場合は責任を問われます。少しでも不審に感じたら、すぐに弁護士に相談しましょう。

Q3: トクリュウ（匿流）は暴力団と関係があるのですか？

• A3:
  • 完全に無関係とは言えませんが、基本的には異なる組織形態です。トクリュウは従来の暴力団と違い、明確な組織構造や帰属意識を持たず、流動的なネットワークを形成しています。
  • ただし、一部で従来の反社会的勢力との接点を持つケースが報告されています。

Q4: トクリュウ（匿流）に関与していた場合、前科はずっと残りますか？

• A4:
  • 一定期間が経過すると「前科消滅制度」により、前科そのものが消えるわけではありませんが、法律上の手続きなどにおいて前科はないものとして取り扱われることになります。
  • 履歴書の賞罰欄への記載義務も無くなりますし、資格取得などへの影響も無くなります。詳しくは弁護士にご相談ください。

Q5: トクリュウ（匿流）からの脅迫や報復が心配です。どうすれば安全を確保できますか？

• A5: まず警察（または弁護士）に相談しましょう。状況に応じて保護を求めることが重要です。
  • 連絡先や住所の変更、SNSアカウントの削除なども検討してください。

まとめ

匿名・流動型犯罪グループ（匿流・トクリュウ）は、デジタル社会の影で発展した新たな形態の犯罪組織です。その匿名性と流動性が特徴であり、従来の犯罪組織とは異なるアプローチで対策を考える必要があります。

被害を防ぐためには、不審な誘いに警戒し、適切な情報リテラシーを身につけることが重要です。すでに関与してしまった場合や、家族が関与している可能性がある場合は、専門家への相談を躊躇わないでください。

社会全体での啓発と対策が、このような犯罪組織の拡大を防ぐ鍵となります。

※この記事の情報は一般的な解説であり、個別の事案については必ず専門家にご相談ください。

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