
留置場に家族や知人が勾留されている方、また今後裁判所での手続きを控えている方にとって、「留置場」と「裁判所」の関係は大きな関心事でしょう。
- 「留置場から裁判所へはどうやって行くんだろう?」
- 「裁判所へはどんな服装で行くんだろう?」
- 「裁判所ではどこで待機するんだろう?」
- 「なぜ留置場で勾留されている人が、裁判所に行かなければいけないのだろう?」
など、初めて裁判を受ける方は、様々な不安や疑問を感じるかもしれません。
この記事では、留置場から裁判所への移動手段、服装、待機場所、裁判を受ける際の疑問、家族や知人が知っておくべきことなど、詳しく解説していきます。
留置場で勾留されている人がどうして裁判所に行かなきゃいけないの?
留置場(留置所)で勾留されている人が裁判所に行かなければならない理由は、主に以下の3つに分類されます。
- 勾留の確認と延長
- 勾留の確認:
- 裁判所は検察官からの勾留請求に対し、勾留の必要性を確認し、被疑者が勾留要件を満たしているかどうかを判断します。
- 勾留要件には「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」や「逃亡の恐れ」などがあります。
- 勾留の延長:
- 必要に応じて勾留期間が延長されることがあります。
- 通常は10日間ですが、最大20日間まで延長されることがあります。
- 現実的には割と軽微な犯罪でも、勾留が認められればほぼ自動的に20日間の勾留となります。
- 👉 詳しくはこちら >> 勾留とは? 逮捕後の流れや期間、勾留の意味を徹底解説!
- 勾留の確認:
- 公判出席の義務
- 公判出席の必要性:
- 裁判所では被告人が公判に出席し、事件の内容を説明し、弁護することが求められます。
- 証拠提示と反論:
- 裁判所では証拠が提示され、被告はその証拠に対して反論する機会を与えられます。
- これにより、被告は自分の無実を主張したり、罪の軽減を求めることができます。
- 公判出席の必要性:
これらの理由から、留置場で勾留されている人は裁判所に出廷する必要があります。
留置場と裁判所の関係とは?
留置場(留置所)は、逮捕・勾留された被疑者を一時的に収容する施設であり、裁判所は、裁判を行う機関です。
留置場で勾留されている人が裁判を受けることになった場合、留置場から裁判所へ移動し、裁判を受けることになります。
留置場から裁判所へ行くのはどんな人?
留置場で勾留されている人が、以下のような場合に裁判所へ行くことになります。
- 勾留質問:
- 逮捕から48時間以内に検察官が勾留を請求してた場合、そこから24時間以内に裁判官によって勾留の可否が判断されます。勾留を判断するために裁判所で行われるのが、「勾留質問」です。
- 刑事訴訟法61条では、勾留質問なしに勾留決定できないと、以下のように定めています。
第六十一条 被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
- その他、勾留決定に対する異議申し立てや、勾留理由開示請求など、勾留に関する手続きのために裁判所へ行くことがあります。
- 刑事裁判:
- 起訴された被告人が刑事裁判を受けるために裁判所へ行きます。
留置場から裁判所への移動方法
護送バスの特徴
- 装甲仕様:
- 外から内部が見えない遮光ガラスを採用しています。
- 脱走できないように、運転席と乗車口が仕切られていて、金属扉で運転席側から施錠できるようになっています。
- 収容人数:
- 1台あたり最大25名程度乗車します。
- 移動時間:
- 早朝7時ごろに出発し、複数の警察署を巡回していきます。
👉 詳しくはこちら >> 留置場から地検・裁判所へはどうやって行く? 護送バスの内部や特徴も解説
同行室での待機
- 裁判所到着後は「同行室」と呼ばれる待合室で待機します。
- 東京地方裁判所では、一度東京地方検察庁(東京地検)に行き、そのあと裁判所に向かいます。
- 両手に手錠をしたまま、1日を過ごします。
- 昼食は地検同様、両手錠をしたまま、食べます。
- 特徴(東京地方裁判所の事例):
- 大同行室
- 駅のホームにあるようなプラスチックの椅子で座れます。座面がお尻の形になっているため、地検の同行室の木の長椅子に比べるととても楽に座れます。
- 100名ほどが同時に待機できる作りになっています。
- トイレは大・小便用に分かれています。
- 小便用トイレは3つあります。小便用トイレの横に手洗いがあります。手洗いやうがいは全て小便用トイレの手洗いを使用します。
- 大便用トイレ(洋式トイレ)大同行室に2つあります。小窓から中が見えるようになっていますが、独立した作りになっていて、ドアで閉められるようになっています。
そのため、地検の同行室よりも気分良くトイレが使えます。 - 大便時のみ、片手錠にしてくれます。同行室正面にロールのトイレットペーパーが置いてあります。そこから必要な量だけトイレットペーパーを持っていきます。
- 水飲み用の水道(温水可。シングルレバータイプ)は、小便用トイレの前に3つ設置してあります。あくまで飲水用で、手洗いをすると警察官に怒られます。
- 中同行室
- 地検と同じような硬い木製の長椅子(約50cm幅)のところで座って待機しなくてはなりません。
- 地検の木の椅子と似ていますが、少し前後幅が広いです。
- 同行室内にトイレはなく、30分に1度、監視の警察官の入れ替えの際に、トイレを申請して外のトイレに連れて行ってもらう形です。
- トイレの際は、警察官の監視が付きます。
- 地検と同じような硬い木製の長椅子(約50cm幅)のところで座って待機しなくてはなりません。
- 単独送の際の同行室
- 単独送の際は、大・中同行室とは別の同行室に入ります。
- 逃走防止のため、一人の被疑者に警察官が3名つきます。
- 他の警察署の単独送の被疑者と同じ部屋になることがあります。
- 被疑者は木の長椅子に座らされ、警察官はプラスチック製の椅子に座ることが多いです。
- 大同行室
護送中の被疑者の扱い
身体拘束の方法
- 手錠:移動中は常に両手に手錠を着用します(前手錠が基本です)。
- 腰縄:護送バス内での安全確保のため使用されます。護送バスでは、縄を手錠中央のリングに通して、他の被疑者と結束します。1本の縄で20人ほどの被疑者を同時に結束します。
- 監視体制:一つの護送バスにつき4人(運転手含む)の警察官が付き添います。運転席側に2名。被疑者が座っている座席側に2名の警察官が護送します。
服装規定
留置場で勾留されている人が公判に出る場合について記載します。
- 衣服:基本的に留置場で着用しているスウェット上下で裁判所に行きます。
- 起訴後の公判に留置場から出廷する際は、スーツを着用して出廷することが可能だそうです(経験談は確認できていません)。
- 靴:基本的に留置場で支給されるサンダルで公判に出ることになります。
法廷出廷までの流れ
典型的なスケジュール
東京地方検察庁(東京地検)の事例をご紹介していきます。
時間 | 内容 |
---|---|
6:30 | 起床・朝食 |
7:00〜8:00 | 護送バス乗車(各警察署に回るため、留置場所によって乗車時間は異なる) |
9:00〜9:30 | 地検到着。地検の同行室に一度入り、待機。 |
10:00〜11:00 | 裁判所到着・同行室待機 |
11:00〜16:30 | 法廷入廷(裁判の時間による) |
12:00 | 昼食(地検と同じ。パン2個・ジャム2種類・マーガリン・チーズスティック・ドリンク・白湯) |
16:00〜 (勾留判断の件数が混んでいると、19:00過ぎになることもある) | 同行室内でロープに結束され、バスに乗車。地検に向かう |
16:30〜 | 地検の同行室で待機。 標準的には、この時間に検察官の調べが終わる |
16:30〜 | 検事調べが終わり、裁判所から帰ってきたルートから順に、護送バスで留置場へ送迎 |
18:00〜20:00 (遅いときは21:00近くなることがある) | 留置場到着。 到着後、別室で夕食を食べる。夕食を済ませた後、部屋に戻る |
法廷内での注意点
起訴後、留置場から公判に出た場合の注意点をご案内します。
- 裁判官に一礼:裁判官が入廷してきた時に一礼するのが決まりです。
- 発言制限:裁判長の許可なく話せません。
- 証人席:被告人は専用の席に着席します。
- 家族との接触:法廷内での会話はできません。
家族が知っておくべきポイント
面会のタイミング
- 裁判当日の面会は原則不可となります。
- 裁判に向けた差し入れの場合は、前日までに差し入れや手紙を済ませる必要があります。
重要な注意事項
- 写真撮影:
- 法廷内外での撮影は全面禁止となります。
- 携帯電話:
- 留置場で勾留されている場合は、留置場で保管、または証拠資料として押収されているため、持ち込めません。
- 保釈中なら携帯を持って行くことは可能ですが、裁判中は着信音が鳴らないようにしなくてはなりません。電源OFFが望ましいです。
- 遅刻:
- 留置場で勾留されているときは護送車での送迎となりますから、関係ありません。
- 保釈中、公判に出るときは遅刻する可能性があります。
- その場合、基本的には到着後開始となります。あまりにも到着が遅いときは、閉廷になってしまうことがあります。
- 公共交通機関の乱れによって遅刻となり、あらかじめ電話で裁判所に連絡していた場合はそんなに厳しい対応とならないようです。
- ですが、寝坊など個人的な理由によるものである場合は、心象が悪くなることがあります。
- 最悪、保釈取り消しなどの可能性もあるため、くれぐれも遅刻しないようにあらかじめ計画するようにしましょう。
- 欠席:
- 留置場で勾留されているときは、護送車での送迎となりますから、無断で欠席することはありません。
- 保釈中に公判に出るときに、欠席することはあり得ます。
- 体調不良や入院での欠席であり、あらかじめ裁判所に連絡がいっていれば、大事には至りません。
- それ以外の理由の場合、「保釈の取り消し」「保釈金の没収」だけでなく、「不出頭罪(下記条文参考)」で処罰される可能性があります。
- くれぐれも欠席しないようにしましょう。
第二百七十八条の二 保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、召喚を受け正当な理由がなく公判期日に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
よくある疑問と回答
Q&A
留置場で勾留されている被留置者(被疑者)が、勾留判断のため裁判所に行くケースや、留置場から公判に出る場合について記載していきます。
- Q1: 裁判所でどのくらい待つの?
- A1: 基本的に護送バスのスケジュール通りに動きますので、地検にいる時間や公判の時間も含めると、8時間前後(朝9時半頃〜夕方17時過ぎまで)拘束されます。
- Q2: 公判中、家族に会えるの?
- A2: 裁判所内での面会は原則としてできません。ですが、公判中に傍聴席から家族を見ることは可能です。
- Q3: 持ち物は?
- A3: 基本的に何も持ち込めません。初公判の時は、事前に召喚状が届きます。初公判の時はそちらを持参します。
まとめ
まとめ
本記事では、留置場から裁判所への移送の流れや、裁判所での扱いについて解説しました。
以下のポイントを押さえておくといいでしょう。
- 留置場は被疑者・被告人の一時収容施設、裁判所は逮捕後の勾留判断を行う、または起訴後の審理を行う場
- 移送は護送バスまたは専用車両で行われ、手錠・腰縄を装着して移送される
- 裁判所到着後は専用の待機室(同行室)で待機し、厳重に監視・管理されている
- 裁判を受ける際の服装は留置場で勾留されている服装が基本であるが、私服やスーツの着用が認められる場合がある。
- 裁判所に移送されるのは、勾留判断・起訴後の公判などがある人のみ。
もし家族や知人が留置場にいて、裁判所に行くことになった場合は、事前に手続きの流れを知っておくと安心です。
また、弁護士とも情報を共有するといいでしょう。
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