
逮捕・勾留された場合、留置場での生活は外部と遮断され、様々な制約を受けることになります。その中でも、睡眠環境の変化は、不眠症を引き起こす大きな要因の一つです。
- 「留置場で不眠症になったりしないの?」
- 「逮捕された家族が不眠症なんだけど大丈夫か心配」
- 「就寝後も照明がついていると聞くけど、寝られるの?」
- 「留置場の睡眠環境ってどんな感じなの?」
など、様々な疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
この記事では、留置場における睡眠環境と不眠症について、徹底的に解説していきます。
睡眠環境の実態、不眠症の原因と対策、家族ができるサポートなど、家族が留置場に入っている人や、今後の可能性を心配している人にとって役立つ情報をお届けします。
留置場の睡眠環境とは?
寝具と寝るスペース
- 寝具について
- 敷布団 1枚:セミシングルサイズのとても狭い布団。薄く俗にいう「せんべい布団」というものです。
- 毛布 2枚:ゴワゴワした固い素材の毛布です。サイズは敷布団と同じセミシングルサイズです。
- 枕:ペシャンコの枕で、真ん中が盛り上がっているため、寝ずらい枕です。
- 定期的に交換されます。
- 寝るスタイル
- 畳や絨毯の上に布団を敷いて寝ます。
- 古い留置場だと、ビニールっぽい畳で固く、薄い布団なので寝ていて痛いくらいになります。
- 新しい留置場(リフォーム済み)のところは、絨毯敷きのところが増えているようです。畳より比較的楽なようです。
- 冷暖房
- 個別空調がなく全館空調となり、個別の調整ができません。
- そのため、居室内は冷暖房が効きすぎるくらいのことが多いです。
- 夏場は冷房が効きすぎていて寒いくらいですし、冬場は暖房が効きすぎるくらいとなります。
- そのため、体調管理が重要になります。
- 寝るスペース
- 布団がセミシングルサイズであり、寝返りが自由に打てないほどの狭さとなります。
- 部屋が満室になると、横の人と接してしまうくらいの距離感になってしまいます。
このようにお世辞にも寝やすい環境とは言えません。
👉 詳しくはこちら >> 留置場の部屋はどんな作りなの? その実際を解説!
照明はつけっぱなし?
防犯上の理由から、夜間でも薄明かりがついています。
- 照明がついている場所
- トイレ(全灯):トイレの電気は普段通りについています。外から監視ができるように窓が設置してあるため、居室をその灯りが照らしてしまいます。
- 居室(減灯):就寝中は、点灯している白色蛍光灯の数を減らします。
- 廊下(減灯):廊下は減灯はしているものの、歩いたり、書類を読んだりするのに支障がない程度の明るさはあります。居室と廊下は鉄格子で遮られているため、廊下の灯りが居室内に入ってきます。
完全な暗闇でないと眠れない人にとっては、この環境が大きな負担になる可能性があります。
騒音の問題
- 自室の音
- いびき:多少のいびきであれば慣れますが、とても大きないびきをかく人がいます。そのような方と同室になると睡眠が妨げられてしまいます。
- トイレ:夜間、トレイに行く人がいると、トイレを流す音がかなり響きます。留置場のトイレは完全には閉鎖されていないことに加え、流す水量が強いため大きな音が響いてしまいます。
- 歯軋り:歯軋りをする人がいると、その音が睡眠を妨げることがあります。
- 大きな寝言:人によっては寝言で喋ったり、大きな叫び声をあげる人もいます。
- 弁護士接見のための呼び出し:弁護士は24時間365日接見可能なため、就寝後に接見がある場合があります。その際は、寝ている被留置者に声をかけて起こしますし、金属扉の開け閉めの音も響くため、起きてしまうことがあります。
- 精神的に不安定な人:夜に担当さんを頻回に呼んだり、ずっと呟き続けるような人も稀にいます。
- 他の部屋の音
- いびき:近くの部屋に大きないびきをかく人がいて、睡眠を妨げることがあります。居室同士は壁で仕切られていますが、廊下部分は鉄格子ですから、近くの部屋の音は普通に聞こえてきます。歯軋りは音量が小さいため、他室では気にならないようです。
- トイレ:他室のトイレの音も、仕切りが少ないのでよく聞こえてしまいます。
- 弁護士接見のための呼び出し:寝ている被留置者を起こす声や金属扉の開け閉めの音が睡眠を妨げることがあります。
- 人の声:稀なケースですが、他の部屋の人に精神的に病んでいる人がいた場合、夜に担当さんを頻回に呼んだり、ずっと呟き続ける声が睡眠を妨げることがあります。
- 廊下の音
- 足音:消灯後の静かな環境だと、意外に担当さんの足音が響きます。15分に一度は巡回しますので、その音が響き眠れなくなる人もいます。弁護士接見の際に生じる足音もあります。人によっては、音を立てながら歩く癖を持っている人もいるため、割とバカになりません。
- 話し声:留置担当官同士の話し声だったり、弁護士接見の際の声などが気になることがあります。
- 事務作業する音:留置場担当官の詰所は居室部分のすぐ横にあるため、留置担当官の事務作業する音が響きます。それが気になることがあります。
留置場は完全な個室とは限りませんし、基本的には他の被留置者と同室になります。
そのため、このような生活音が気になる場合があります。
睡眠の質が悪化する一因となるため、環境への適応が求められます。
留置場で不眠症になる可能性はある?
以下のような睡眠を妨げる要因があるため、不眠症になりやすい環境と言えるでしょう。
実際に、留置場体験者へのインタビューでは多くの被留置者が不眠に悩まされているという話しを聞きます。
睡眠不足は取り調べでのミスによる不利益を起こしたり、自白強要による冤罪の原因の一つともなり得ますので、可能な限りの改善をして欲しいものです。
- ストレスが大きな要因
- 逮捕や勾留のストレスが原因で、眠れなくなる人は少なくありません。
- 取り調べや今後の裁判の行方、同居人のストレス、家族への影響などを考えてしまい、不安が増し、不眠症につながることがあります。
- 生活リズムの変化
- 留置場では決められた時間に消灯・起床が行われます。
- 普段の生活リズムと異なるため、最初のうちは適応に苦労することもあります。
- 特に、自由な時間が制限されていることで、ストレスの発散が難しくなる点も影響します。
- 寝具や音、スペースの問題
- 前述した通り、留置場は睡眠に適した寝具や環境ではありません。
- 見知らぬ、しかも被疑者同士の相部屋でもあり、寝にくい環境が揃っているとも言えます。
- 運動量が少ない環境
- 留置場の居室からほとんどの時間、外に出ることはできません。
- 運動の時間というものが20分ほどありますが、運動できるほど広くないため、実質髭剃りと爪切り、コミュニケーションの場となっています。
- 移動のため歩くということもほとんどないため、1日1000歩も歩かない生活となります。
- そのため肉体的な疲労がなく、眠れなくなりやすいと言えます。
- 早すぎて長すぎる就寝時間
- 疲れていない上に、留置場の就寝時間は管理上の都合もあり、21時ととても早い時間となります。
- 留置場に入っている人の多くは20〜30歳代ですから、21時に寝ている人はほとんどいないでしょう。
- 21時に寝て、翌朝6時半(場所によっては7時)まで寝ていなくてはいけません。
- その長い就寝時間が強制されているところも不眠症の原因となります。
- 不安や後悔が睡眠を妨げる
- 今後の取り調べの不安であったり、犯した罪への後悔の念に苛まされます。
- 特に外部と完全に遮断された上に、娯楽や仕事すらもないため、考えたくなくても考えてしまう環境です。
- そのため、寝ていても不安や後悔がグルグルと頭を回ってしまい、不眠症になってしまうことがあります。
👉 詳しくはこちら >> 留置場での精神的ストレスの原因と解消法|元被留置者から聞いた具体的な対策
留置場での不眠対策
- 日中の運動を意識する
- 運動の習慣化:留置場では基本的に運動する機会が限られていますが、運動時間を活用したり、居室内での運動時間を決めるなどして、運動を習慣化することが大切です。
- ストレッチ:独房内で簡単なストレッチを行うことで、血行を良くし、副交感神経を活性化するため、睡眠を促すことができます。座ったままや立ったままの時間が長いと、体が緊張しやすくなるため、こまめにストレッチをすることが大切です。
- 筋力トレーニング:筋トレを行うことで、閉鎖環境下での筋力低下を防げるだけでなく、うつ症状の予防〜改善、代謝促進、ストレス軽減、心地よい疲労による睡眠への好循環などが期待できます。時間を決めて実施するなどして習慣化していきましょう。
- ウォ―キングや足踏み:室内の狭い環境ですが、ウォーキングをしたり、その場で足踏みをしたりして、ストレス軽減や自律神経の安定、睡眠への好影響などの有酸素運動の効果を得ることが可能です。足音による騒音に注意は必要ですが、習慣化すると良いでしょう。
- 瞑想や深呼吸を取り入れる
- 瞑想や呼吸法は、心を落ち着かせる効果があります。特に「4-7-8呼吸法」(4秒吸って、7秒止めて、8秒吐く)は、睡眠を促進する効果があるとされています。
- また、マインドフルネス瞑想も有効です。これは、「今、この瞬間」に意識を集中させることで、過去の後悔や未来の不安を一時的に手放し、リラックスする方法です。目を閉じて、呼吸の流れに意識を向けるだけでも、ストレス軽減に役立ちます。留置場経験者から聞いた体験談の中でも、マインドフルネスを行うことで、不安の低下や睡眠への好影響があったというものもあり、有効性が示唆されます。
- 寝る前に目を閉じる習慣をつける
- 照明がついたままでも、目を閉じてリラックスすることで脳を休ませることができます。
- ※なお、現在の留置場ではタオルや毛布をアイマスク代わりに使用することは不可となっています。これは、自傷・自殺防止の観点から制限されているため、留置場内での対策としては使用できません。
- 照明がついたままでも、目を閉じてリラックスすることで脳を休ませることができます。
- 医師や留置場担当官に相談する
- 極度の不眠症に陥った場合、2週間に1回にある医師による診察時に相談するのも良いでしょう。場合によっては、眠剤の処方を受けることができます。
- 留置担当官に相談する方法もありますが、睡眠自体には具体的な対応が取れないことが多いです。不眠症の原因が同室のメンバーによるストレスや騒音の場合は、留置場担当官への相談は部屋替えを検討してくれるなどするため、効果的でしょう。
家族ができるサポート
- 面会時のサポート
- 傾聴:被疑者同士の相部屋かつ、不慣れな取り調べによるストレスや不安に苛まされていますので、不安や辛い思いを聞いてあげましょう。声に出すだけでも大きなストレス軽減効果があります。
- 力づけ:励ましの言葉や待っているなどの声かけをしてあげましょう。「一人じゃない」と思えることが大きな心の支えになります。
- 適切な差し入れ
- 快適な睡眠に役立つ書籍
- 快適な着心地の衣服や下着などの差し入れ
- 弁護士との連携
- 場合によっては、睡眠環境改善の要請をしてもらうと良いかもしれません。
5. まとめ
- 留置場ではストレスや環境の影響で不眠症になる可能性がある。
- 寝具の質や照明、騒音などが睡眠の妨げになり得る。
- しかし、ストレッチや呼吸法、マインドフルネスを取り入れることで、睡眠を改善することができる。
- タオルや毛布をアイマスク代わりに使うことは禁止されている。
- どうしても寝られない場合は、医師や留置場担当官に相談することが大切。
不眠は留置場にいる間だけでなく、出所後の生活にも影響を与える可能性があります。睡眠の質を向上させる工夫を取り入れ、できるだけ健康的な状態を保つことを心がけましょう。
【関連記事】
留置場ではどのような生活を送っているのでしょうか?どんな立場の人でもその実情はとても気になるものだと思います。本記事では留置場での1日の生活について、留置場経験者からのインタビューも参考に、なるべくリアルな実情をお伝えしていきます。