留置場と退職:勾留による仕事への影響と対処法を徹底解説

留置場での勾留は、当事者だけでなく家族や周囲の人々にも大きな影響を与えます。特に「仕事」に関する不安は深刻です。「留置場に入ったら会社を辞めなければならないのか」「解雇は避けられないのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、留置場での勾留と退職の関係について、法律的観点や実務的な対応策まで幅広く解説します。逮捕・勾留された場合の雇用関係への影響や、退職・解雇になった場合の再就職についてもお伝えしていきます。

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留置場での勾留と仕事:基本知識

まず、留置場とは何かを簡単に説明しておきましょう。

留置場とは、逮捕された人が裁判を待つために一時的に収容される施設です。警察署内に設置されており、刑が確定している人が入る刑務所とは異なります。

留置場での勾留期間は通常、逮捕から起訴までの最大23日間です。この期間中、被疑者は外部との接触が制限され、当然、仕事に行くこともできません。ここから「仕事」と「留置場」に関する問題が発生します。

留置場での勾留は即退職になる?

結論から言うと、留置場に勾留されたことだけを理由に、自動的に退職になることはありません。日本の労働法では、会社が一方的に労働者を解雇するには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。

単に勾留されたという事実だけでは、即時解雇の正当な理由にはならないことが多いです。しかし、以下のような状況では退職に繋がる可能性が高まります。

  1. 長期間の欠勤
    • 勾留が長期化し、業務に支障をきたす場合
  2. 就業規則違反
    • 会社の規則に「刑事事件に関わった場合は解雇」などの明記がある場合
  3. 信用失墜行為
    • 特に対外的な信用が重要な職種での犯罪行為
  4. 有罪判決確定
    • 特に、職務に関連する犯罪の場合

多くの場合、会社は「無断欠勤」や「就業規則違反」という理由で、解雇や懲戒処分を検討することになります。

留置場での勾留による解雇は正当か

留置場での勾留を理由に会社から解雇された場合、その解雇が法的に正当かどうかは、ケースバイケースです。以下の点が重要なポイントとなります。

解雇が正当と認められる可能性が高いケース

  • 就業規則に明確な規定がある場合は解雇が正当と認められる可能性が高いです。
  • 勾留期間が長期に及び、業務に重大な支障が出ている場合も解雇が正当と認められる可能性が高いです。
  • 犯罪行為が職務に直接関連している場合(横領、業務上背任など)は解雇が正当と認められる可能性が高いです。
  • 会社の信用や評判を著しく損なう犯罪の場合は解雇が正当と認められる可能性が高いです。

解雇が不当と認められる可能性が高いケース

  • 無罪推定の原則に反する形での解雇(起訴前の段階での解雇など)は解雇不当に当たる可能性があります。
  • 勾留期間が短く、業務への影響が軽微な場合は解雇不当になる可能性があります。
  • 犯罪行為が職務と無関係な場合も解雇不当になる可能性があります。
  • 会社が適切な手続き(弁明の機会提供など)を踏まずに解雇した場合は解雇不当になる可能性があります。

もし解雇が不当だと感じる場合は、労働基準監督署や労働組合、法律の専門家に相談することをおすすめします。不当解雇の場合、地位確認や賃金支払いを求める裁判を起こすことも可能です。

勾留中の会社との連絡方法

留置場に勾留された場合、直接会社に連絡を取ることは難しくなります。以下の方法で対応するのが一般的です。

家族や知人を通じて連絡

最も一般的なのは、家族や信頼できる知人に状況を説明し、会社に連絡してもらう方法です。具体的には・・・

  1. 接見時に家族に状況を説明し、連絡を依頼するといいでしょう。
  2. 基本的には会社への連絡内容を具体的に伝えることが大切です。
    • 病気や事故など、状況によっては実際の事情を伝えないケースもあります。
    • その場合は後にトラブルに発展する可能性もゼロではないため、弁護士と相談の上、方針をしっかり練る必要があります。
  3. 想定される勾留期間や今後の見通しについても可能な範囲で伝えるといいでしょう。
    • ただし、②と同様に、状況を伝えない選択をした場合はその限りではありません。

弁護士を通じて連絡

弁護士がついている場合は、弁護士を通じて会社に連絡することも可能です。

  1. 弁護士に会社への連絡を依頼する
  2. 場合によっては、勾留の事実を伝えずに「体調不良」などの理由を伝えてもらうケースもある
  3. 今後の法的手続きや見通しについても説明してもらえる

留意点

  • 会社に連絡する際は、プライバシーの観点から、必要最小限の情報だけを伝えるよう依頼するとよいでしょう
  • 勾留期間が明確でない場合は、「しばらく休む必要がある」といった表現にとどめることも検討する
  • 無罪の可能性がある場合は、その旨を伝えることも重要

勾留後の職場復帰の可能性

留置場での勾留後、元の職場に復帰できるかどうかは、様々な要因に左右されます。

職場復帰の可能性を高める要因

  1. 無罪または不起訴処分
    • 罪に問われなかった場合は、復帰の可能性が高まります。
  2. 勾留期間の短さ
    • 短期間で釈放された場合、業務への影響が少なく復帰しやすいと言えます。
    • また、場合によっては職場にバレずに職場復帰することも可能です。
    • 起訴され、有罪が確定しなければ、逮捕の前歴は警察に残りますが、前科は残りません。
    • 早期釈放が得られるように弁護士と密に連携していきましょう。
  3. 会社の理解
    • 理解のある上司や人事担当者がいる場合は職場復帰しやすいでしょう。
    • 協力者を探すことが大切です。
    • 留置場での勾留中は、家族や知人、弁護士に状況を伝えて動いてもらいましょう。
  4. 犯罪の性質
    • 軽微な犯罪や過失犯の場合は、比較的復帰しやすいと言えます。
  5. 職務との関連性
    • 犯罪と職務が無関係であれば、復帰の可能性が高まります。

職場復帰を困難にする要因

  1. 有罪判決
    • 特に実刑判決を受けた場合は職場復帰が困難になることが多いです。
  2. 会社の信用を著しく損なう犯罪
    • 特に対外的な信用が重要な職種の場合は職場復帰が難しくなりやすいです。
  3. 長期の勾留
    • 勾留が長期に渡ると職場内の信用が失墜するほか、場合によっては代替要員を確保されてしまうこともあります。
  4. 職務関連の犯罪
    • 横領や背任など、職務に関連する犯罪は職場復帰が難しくなりやすいです。
  5. 就業規則での明確な禁止
    • 犯罪行為による解雇が明記されている場合は職場復帰が難しくなりやすいです。

職場復帰を目指すためのステップ

  1. 誠意ある対応
    • 状況をオープンに説明し、反省の意を示すことが基本ですが、短期での釈放が見込める場合であれば、体調不良などで隠し通すことも検討されます。対応については弁護士と相談しましょう。
  2. 弁護士のサポート
    • 必要に応じて労働問題に詳しい弁護士や、当番弁護士などに相談しましょう。
  3. 段階的な復帰
    • 最初は時短勤務や配置転換など、柔軟な対応を提案してもいいかもしれません。
  4. 信頼回復への努力
    • 職場での信頼を取り戻すための具体的な行動や行動計画を示していくことが大切です。

留置場での勾留が原因で退職した場合の再就職

留置場での勾留を理由に退職した場合、再就職には一定のハードルがあることは否めません。

しかし、適切な対策を取ることで、新たなキャリアをスタートさせることは十分可能です。

再就職時の履歴書の書き方

退職理由や空白期間の説明は、再就職の大きな課題となります:

  1. 正直に伝える方法
    • 犯罪の内容によっては、事実を正直に伝え、反省と更生の意志を示すことも大切です。
  2. 一般的な表現を使う方法
    • 「一身上の都合」など、詳細を明かさない表現を使うことも検討しましょう。
  3. 空白期間の説明
    • 「自己啓発期間」「療養期間」などと説明するケースもあります。

どの方法が適切かは、犯罪の内容や勾留期間、応募する職種によって異なります。ただし、嘘はいけませんので、退職理由を言わない場合はぼやかしますし、退職後の空白期間についてはそれなりの理由を考えるのがいいでしょう。

再就職に有利な資格取得

勾留後の空白期間を有効活用し、以下のような資格取得を目指すことも選択肢の一つです:

  • ITスキル(プログラミング、ウェブデザインなど)
  • 事務系資格(簿記、MOS資格など)
  • 技術系資格(電気工事士、建設業関連資格など)
  • 語学力(TOEIC、英検など)

協力的な企業や団体を探す

更生支援に積極的な企業や団体を探すことも有効です。

  • 協力雇用主制度に参加している企業
  • NPOや社会福祉団体
  • 親族や知人の経営する企業
  • 前科を問わない求人を出している企業

協力雇用主は、犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪をした者等を雇用し、又は雇用しようとする民間の事業主の方々です。
 現在、全国で約25,000の協力雇用主が協力しています。

引用元:法務省 協力雇用主

起業やフリーランスの道

雇用形態にこだわらない選択肢として、以下も検討価値があるでしょう。

  • 自営業やフリーランスとしての活動
  • クラウドソーシングでの仕事獲得
  • オンラインでのスキル販売
  • 小規模ビジネスの立ち上げ

逮捕・勾留による退職時の法的権利

留置場での勾留が原因で退職することになった場合でも、労働者としての法的権利は保護されています。

退職金について

退職金は、就業規則や退職金規程に基づいて支払われるものです。

  • 自己都合退職の場合:
    • 通常は規定通りの退職金が支給されます
  • 懲戒解雇の場合:
    • 退職金が減額または不支給となる可能性があります
  • 会社都合解雇の場合:
    • 通常の退職金に加え、特別加算がある場合もあります

勾留を理由とした解雇が、どのカテゴリーに該当するかは、会社の規定や解雇通知書の記載内容によって異なります。

失業給付について

雇用保険の失業給付(失業手当)については:

  • 自己都合退職
    • 3ヶ月の給付制限期間があります
  • 会社都合解雇
    • 給付制限期間なしで受給できます
  • 懲戒解雇
    • 状況によって異なりますが、多くの場合は「重責解雇」として扱われてしまいます。具体的には・・・
      • 失業保険受給の受給要件が厳しくなります。通常「離職前の1年間の被保険者期間が6ヶ月以上」とされているものが、重責解雇になると、「離職前2年間の被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要」とかなり要件が厳しくなっています。
      • また、失業保険の待機期間が長くなります。通常は「7日間の待機」でいいものが、重責解雇だと「7日間の待機期間に加えて、3カ月の給付制限期間を経過」しなければ失業保険を受給できなくなってしまいます。
      • また、雇用保険の受給日数も減らされてしまいます。通常は「年齢と雇用保険の加入期間に応じて90日から330日間」雇用保険が受給できますが、重責解雇の場合は、「雇用保険の加入期間に応じて90日から150日間」とかなり制限されてしまいます。

犯罪行為による勾留が理由の場合、自己都合退職や懲戒解雇として扱われることが多いです。

なるべく退職後の不利益を減らすためにも、弁護士と連携することをオススメします。

健康保険と年金について

退職後の健康保険と年金についても理解しておく必要があります:

  • 健康保険
    • 退職後は国民健康保険に加入するか、任意継続被保険者となる選択肢があります
  • 年金
    • 退職により厚生年金から国民年金に切り替わります

これらの手続きは、退職後速やかに行う必要があります。市区町村の窓口で相談すると良いでしょう。

よくある質問

Q1: 留置場に勾留されたことは会社に必ず伝えなければならない?

A: 法律上、勾留されたことを会社に伝える義務はありません。ただし、無断欠勤となるため、何らかの理由(病気や事故など)を伝えることが一般的です。状況によっては、家族や弁護士を通じて事実を伝えることも検討しましょう。

Q2: 不起訴になった場合、解雇は不当ではないか?

A: 不起訴処分となった場合でも、無断欠勤や会社の信用失墜など別の理由で解雇される可能性はあります。ただし、単に勾留されただけで、かつ不起訴となった場合の解雇は、不当解雇と認められる可能性が高まります。このような場合は、労働問題の専門家に相談することをおすすめします。

Q3: 留置場での勾留中に給料は支払われる?

A: 原則として、勤務していない期間の給料は支払われません。ただし、会社の規定によっては、有給休暇を充当できる場合や、特別休暇として一部給与が支払われる場合もあります。

Q4: 勾留されたことが理由で解雇された場合、その後の面接ではどう説明すべき?

A: 軽微な事件や無罪・不起訴の場合は、「一身上の都合」などと説明するケースが多いです。しかし、報道された事件や重大な犯罪の場合は、正直に伝え、反省と更生の意志を示す方が信頼を得られることもあります。状況に応じた判断が必要です。

Q5: 起訴されたが保釈された場合、会社に行くことはできる?

A: 保釈されれば、原則として会社に出勤することは可能です。ただし、保釈条件によっては制限がある場合もあります。また、会社側が勤務を認めるかどうかは別問題です。保釈された場合は、弁護士と相談の上、会社と復帰について話し合うことをおすすめします。

まとめ

留置場での勾留が仕事に与える影響は小さくありません。しかし、適切な対応を取ることで、問題を最小限に抑えることは可能です。

勾留された場合は・・・

  • 家族や弁護士を通じて早めに会社に連絡を取る
  • 勾留期間や今後の見通しについて可能な限り情報提供する
  • 解雇された場合は、その正当性を法的観点から検討する
  • 再就職に向けた準備を計画的に進める

留置場での勾留や退職に関わる問題は、個別の状況によって大きく異なります。不安や疑問がある場合は、弁護士や労働問題の専門家に相談することをおすすめします。

適切な対応と準備によって、留置場での勾留後も、職業生活を立て直すことは十分に可能です。

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