
留置場には日本人だけでなく、多くの外国人被留置者も収容されています。
同じ部屋になった人が外国人だった場合、様々な不安や疑問を持つかもしれません。また、知人や家族が在日外国人だった場合、留置場での対応に強い不安を覚えるかもしれません。
- 「留置場に外国人が多いって聞くけど本当?」
- 「外国人はどんな理由で勾留されているの?」
- 「外国人と同じ部屋になったら大変なの?」
- 「在日外国人だけど、留置場で辛い目にあっていない?」
- 「在日外国人で留置場に勾留されている家族や知人が心配」
などの気になる情報を知りたい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、留置場における外国人の勾留について、徹底的に解説していきます。外国人の勾留理由、留置場での生活、コミュニケーション方法、注意点、家族や知人の対応方法、外国人被留置者と日本人被留置者の関係性など、気になる情報を網羅しました。
留置場における外国人被留置者の数と国籍
日本の留置場における外国人被留置者の正確かつ最新の数は公表されていませんが、いくつかの情報源から状況を把握することができます。
- 全体的な傾向:
- 厚生労働省の発表によると、日本における外国人労働者数は増加傾向にあり、令和6年10月末時点で230万2587人と過去最多を更新しています。
- この外国人労働者数の増加は、刑事司法制度に関与する外国人の数にも影響を与えていると考えられます。
- 大都市圏では外国人被留置者の割合が高い傾向にあります。
- 国籍別の割合:
- 2023年に日本で犯罪で逮捕された外国人のうち、ベトナム国籍が最も多い割合(36.7%)を占めています。
- 次いで中国、メキシコ、マレーシア、タイ、米国からの被留置者が多くなっています。
- 刑事施設における外国人受刑者の割合:
- 令和元年版犯罪白書によると、刑事施設(刑務所、拘置所、少年刑務所)における外国人受刑者の割合は約7%となっています。
- 留置場経験者からの情報:
- 警視庁管内の、ある留置場では、過半数が外国人だったそうです。
- 確実に外国人が勾留されるケースが増えてきているようです。
外国人被留置者の留置理由
外国人被留置者が留置場に収容される理由は多岐にわたります。
主な理由としては、以下のものがあげられます。
- 不法滞在(オーバーステイ)
- 在留資格が切れたまま日本に滞在している場合。
- 薬物関連犯罪
- 麻薬や覚醒剤の所持や使用。
- 窃盗や詐欺などの財産犯
- 小額の窃盗から大規模な詐欺まで幅広く。
- 暴行・傷害などの粗暴犯
- 身体的危害を加えた場合。
外国人にはさらに、以下のような問題があります。
外国人は勾留が認められやすい!?
外国人被疑者の場合、「逃亡の要件」が認められやすく、身体拘束がなされやすい傾向があります。
- いざとなれば母国へ逃げることができる
- 日本国内でも安定した生活の拠点がない
- 拠点がなければ、日本から出国しなくても逃亡してしまうかもしれない
上記のように判断されてしまいやすいからです。
在留資格の取り消しや強制退去になることも!?
また、刑事事件で嫌疑をかけられたり、有罪の判決を受けたりすると、在留資格が取り消される、または退去強制の手続きがなされることがあります。
そのため、検察官や裁判官においても、「この被疑者は近い将来、在留資格の取消しや退去強制の対象になるかもしれない。その手続きを恐れて逃げたり証拠隠滅をしたりするかもしれない」と考えることがあり、身体拘束を容易にしてしまうことがあります。
オーバーステイになってしまうことも!?
さらに、逮捕・勾留されることによって、在留期間を過ぎてしまいオーバーステイ(不法残留)となってしまうケースがあります。
留置場での勾留期間中に、万が一、在留期間の更新ができなかった場合、オーバーステイとなってしまい、そのまま強制退去ということもあり得ます。
在留期限が近い方は、弁護士を通じて、在留資格の延長手続きを取るか、在留特別許可を申請するか、相談して対策する必要があるでしょう。
外国人への取り調べがキツくなってきている!?
近年、外国人による組織犯罪が増えてきています。そのため、外国人への捜査・取り調べ・検挙が強まっています。そのため、余罪の追求が増え、逮捕された後の身体拘束が長引いていく場合があります。
留置場経験者による体験談:ビザ切れで逮捕・勾留されたベトナム人が、違法カードの所持・使用の余罪で再逮捕されていたそうです。このように外国人=余罪があると疑われ、徹底的に取り調べがされるようです。
留置場における外国人被留置者の待遇と環境
- 一般的な基準:
- 留置施設の環境は、日本の法律に基づき、人道的配慮がなされているとされています。
- 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき、人権に配慮した処遇と施設の改善が推進されています。
- 外国人被留置者も、日本人と同様に人権が尊重され、適切な処遇を受ける権利があります。
- また、可能な限り、それぞれの習慣に従って処遇するよう配慮しているとされています。
- しかし、外国人被留置者にとっては、言語や文化の違いから様々な困難が生じます。
- 言語の壁:
- 日本語を話せない外国人被留置者にとって、警察官や検察官とのコミュニケーションは大きな課題となります。
そのため、通訳の配置や多言語対応の職員の配置が求められます。
実際、取り調べには通訳が同行することが多いです。 - ただし、弁護士との接見には通訳が同行しないため、言語の壁が大きく立ちはだかります。
弁護士との接見交通権(面会できる権利)はあるものの、言語の壁があり、弁護士を活用できないという現状があります。 - 複数の言語に対応した告知書や翻訳機が用意されているとアナウンスされていますが、実務上、留置場内で翻訳機が使われているという話は聞いたことがありません。外国人被留置者に対しても、翻訳機は使われていません。
- 留置場経験者が”留置担当官に聞いた話”だと、スマ―トフォン等の翻訳アプリも使えないそうです。コンクリートに覆われているため、通信状況が悪く、使えないそうです。
- 留置場経験者の体験談によると、外国人被留置者に対し、留置場担当官が留置場内での「母国語の使用を禁止」していたそうです。外国人同士で相談することを防ぐ目的だそうです。
- 日本語を話せない外国人被留置者にとって、警察官や検察官とのコミュニケーションは大きな課題となります。
- 文化的および宗教的ニーズ:
- 食事制限(ハラール食など)や礼拝の自由など、外国人被留置者の文化的および宗教的なニーズへの配慮も重要です。
警察庁によると、「被留置者の信仰する宗教を踏まえた食事の提供を行うなど、言語や宗教等の違いに配慮した処遇に努めている」(出典:警察庁「第1節 警察力を支える活動基盤の整備」より)とありますが、留置場経験者からのヒアリングによると、普通のお弁当がそのまま出されていることが多いようで、実務的にはそこまでの厳密な対応はなされていないようです。 - ただし、アレルギー食などの病気に対する食事は提供されています。
- 食事制限(ハラール食など)や礼拝の自由など、外国人被留置者の文化的および宗教的なニーズへの配慮も重要です。
- 居室及び日常生活:
- 基本的には、日本人、外国人の区別なく、雑居での対応となります。
- 文化の違いや言葉の壁により、辛い思いをしてしまうことが多いです。
- 官本の大半は日本語の書籍であり、同室の人との会話ができなければ、暇を潰すことはかなり難しい環境となります。
4. 外国人被留置者が直面する課題
1. 法的支援の不足
- 言語の壁:
- 言葉の壁があるため、弁護士との意思疎通が困難になる場合があります。
- 日本語があまり話せない時は、弁護士のフォローが不十分になってしまうのが現状です。
- 国選弁護人の場合、言語の壁があるため、接見要望を出してもなかなか来ないという話も聞きます。
- 保釈の難しさ:
- 日本に住所を持たない場合が多く、保釈が難しくなります。
- それ以外にも、保釈保証金の支払い能力がなかったり、身元引受人の確保が難しい場合があります。
- 保釈金を貸し付けてくれる「保釈支援協会」というものもありますが、連帯保証人が確保できなく、利用できないケースも多いです。
2. 文化・生活習慣の違い
- 食生活:
- 食事は基本的に外部の業者に外注していて、コンビニ弁当を安くしたようなものが多いです。
- そのため、食事の嗜好の違いや宗教上の理由による食事制限などに対する配慮が不十分になりがちで、食生活の違いを感じやすい環境です。
- 習慣の違い:
- 日本人との共同生活を強いられるため、習慣と文化の違いにさらされます。
- 慣れない国での留置場生活となるため、強い精神的ストレスにさらされます。
- 精神的なストレスにより、うつ病の発症や、自殺願望などが生じることがあります。
- 宗教活動:
- 礼拝の場所や時間の確保など、宗教活動への配慮が必要となりますが、あまり配慮されません。
- 基本的には自由時間を使うしかありません。
3. 精神的な負担
- 孤独感:
- 言葉や文化の違いから、他の被留置者とのコミュニケーションが難しい場合、とても強い孤独感を感じることがあります。
- 在留資格:
- 勾留が長引くことで在留資格を失う不安を抱えることがあります。
- 在留期限が近づいているときは、弁護士に在留期限の延長申請や在留特別許可を申請してもらう必要があります。
- 在留資格を失うと強制送還の対象になってしまいます。勾留中の在留期限には注意する必要があります。
- 将来への不安:
- 強制送還やその後の生活への不安など、将来に対する見通しが立たないことが精神的な負担となります。
- 👉 詳しくはこちら >> 留置場は辛い? 経験者が語る実情と乗り越え方|不安解消ガイド
4. 制度・手続きの理解不足
- 日本の刑事司法制度や留置場でのルールを理解することが難しく、不安や不満を感じることがあります.
- これらの課題に対し、留置施設では通訳の配置や多言語での情報提供、宗教・文化への配慮など、様々な支援が行われるとアナウンスされていますが、実務上はほぼ成されていないようです。
- 留置場経験者からのヒアリングでは、「母国語の留置場内での使用禁止」「食事は他の被留置者と同じお弁当」「留置場の日課と取り調べ優先」だったそうです。実務上、他の被留置者との区別が難しい現状があるようです。
家族や友人へのアドバイス
家族や友人が留置場に勾留されてしまった場合、どのようにサポートすれば良いのでしょうか。
以下に、具体的なアドバイスをまとめました。
- 精神的なサポート
- 面会に行く:
- 可能な限り面会に行き、励ましの言葉をかけましょう。孤独や不安を和らげることができます。
- ただし、面会は留置担当官による立ち会いが必要なため、管理の都合上の理由で、日本語に限られてしまいます。
- 👉 詳しくはこちら >> 【留置場での面会】基本知識と注意点を徹底解説
- 手紙を送る:
- 留置場での手紙のやり取りは検閲の都合上、日本語に限られます。
- 日本語が読めるのであれば、手紙を送ってあげることをオススメします。
- 手紙は、外部とのつながりを感じさせ、精神的な支えになるからです。近況報告や励ましの言葉を綴りましょう。
- 👉 詳しくはこちら >> 留置場への手紙の送付方法と注意点をわかりやすく解説
- 差し入れをする:
- 必要な日用品や書籍などを差し入れることで、生活の質を向上させることができます。
- ただし、差し入れできるものには制限があるので、事前に確認が必要です。
- 👉 詳しくはこちら >> 【留置場】差し入れの方法と注意点
- 面会に行く:
- 法的なサポート
- 弁護士に相談する:
- 弁護士に相談し、今後の手続きや対応についてアドバイスを受けましょう。
- 留置場に勾留されたことを、ご家族や知人に連絡してくれるのは、警察ではなく「弁護士」です。連絡をくれた弁護士にまずは相談すると良いでしょう。
- 刑事事件に強い弁護士を選ぶことが大切です。
- 弁護士費用の捻出が難しい時は「国選弁護人」を利用することができます。
- 弁護士との接見を促す:
- 被留置者が弁護士と十分にコミュニケーションを取れるよう、接見を促しましょう。
- 情報収集に協力する:
- 弁護士から依頼された場合、事件に関する情報収集に協力しましょう。
- 弁護士に相談する:
- 生活面でのサポート
- 必要なものを差し入れる:
- 衣類、下着、書籍、手紙など、留置場での生活に必要なものを差し入れましょう。
- 👉 詳しくはこちら >> 【留置場】差し入れの方法と注意点
- お金を差し入れる:
- 留置場内での買い物に必要な現金を差し入れましょう。
- 一度に差し入れられる金額は概ね3万円までという制限があります。大きな金額を差し入れたい場合は、事前に確認してください。
- 退所後の生活を支援する:
- 釈放後の住居や仕事の確保など、社会復帰に向けた準備を支援しましょう。
- 必要なものを差し入れる:
- 手続きに関するアドバイス
- 留置場でのルールを伝える:
- 留置場での生活ルールや注意点を伝え、トラブルを避けるようアドバイスしましょう
- 黙秘権について助言する:
- 不利な供述をしないよう、黙秘権について助言することも重要です。
- 留置場でのルールを伝える:
- 連絡
- 大使館への連絡:
- 外国籍の方が勾留された場合、国籍によって多少の扱いの差はあるが、基本的には被留置者が望めば、自国の大使館や領事館に逮捕の事実の連絡をしてもらうことが可能です。
- 大使館から面会要請があった場合は、被留置者が面会を拒否しない限り、面会を行うことができます。
- ただし、裁判所から接見禁止が言い渡されている時は面会はできません。その場合は、弁護士に依頼して、接見禁止の一部解除を求めるといいでしょう。
- 大使館への連絡:
これらのサポートを通じて、被留置者の不安を軽減し、より良い環境で過ごせるよう支援することが大切です。
外国人被留置者の生活実態
日課
基本的に日本人と同じ日課で生活します:
- 起床・点呼
- 毎朝6時30分頃に起床し、点呼が行われます。
- 食事
- 1日3回食事が提供されます。
- 運動時間
- 1日20分ほどの定期的な運動時間が設けられています。
- 入浴
- 夏季は週2回、それ以外は3週に2回、入浴が可能です。
👉 詳しくはこちら >> 留置場に入るとどうなる? 一日の流れを紹介
まとめ
留置場において、外国人被留置者が増えている現実は、日本が多国籍化した結果生じているものです。
以下に、留置場における外国人被留置者について、この記事で解説した内容をまとめます。
- 外国人被留置者の割合:留置場には様々な国籍の外国人が収容されており、地域や時期によって変動しますが、大都市圏では比較的高い割合で存在します。
- 留置理由:入管法違反や窃盗、薬物犯罪、暴行などの刑法犯で逮捕・勾留されるケースがあります。
- 待遇と環境:日本の法律に基づき、人道的配慮がなされた処遇を受ける権利があり、言語や宗教、文化的な背景に配慮した対応が取られているとされています。ですが、留置場経験者からのヒアリングによると、現実的には不十分な対応に留まっているケースが多いようです。
- 直面する課題:言葉の壁、文化的な違い、法的支援の不足、保釈の難しさ、送還の問題など、様々な課題に直面することがあります。
- 家族や友人へのアドバイス:面会等による精神的なサポート、弁護士への相談、必要な物の差し入れ、退所後の生活支援などが重要です。
家族や友人が留置場に勾留された場合、これらの情報を参考に、適切なサポートを心がけましょう。
また、入管法改正の動向にも注目し、外国人に対する、より公正な制度の実現を求めていくことも大切でしょう。
不安や疑問がある場合は、弁護士や支援団体に相談することをおすすめします。
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