逮捕され、留置場に勾留されることは、誰にとっても大きな精神的負担となります。
見通しの立たない状況、自由の制限、外部との遮断など、様々な要因がストレスにつながります。
この記事では、留置場で感じる精神的ストレスへの対策について、その原因と具体的な対処法や解消法について解説していきます。
留置場で感じるストレスの原因
留置場で感じるストレスは、複合的な要因によって引き起こされます。主な原因は以下のとおりです。
環境によるストレス
- 行動の自由の制限:行動の自由が大幅に制限されることで強いストレスを感じ、そのストレスを解消することも難しくなります。
- 時間の使い方の制限:決められた時間割に従って生活しなければなりません。
- 外部との遮断:家族や友人との面会が制限され、情報が遮断されることで孤独感や不安を感じやすくなります。
- 劣悪な環境:狭い個室や複数人部屋での生活、プライバシーの欠如などがストレスを引き起こします。
- 慣れない生活リズムや共同生活:前触れなく逮捕されて留置場に入るため、急な生活リズムの変化が生じ、さらに見知らぬ他人との共同生活を強いられ、強い不安とストレスを受けます。
精神的なストレス
- 見通しの不透明さ:今後の捜査や裁判の見通しが立たず、不安や焦りを感じます。
- 取り調べに対する不安: 取り調べで何を質問されるのか、どのように対応すれば良いのかなど、不安や恐怖を感じまやすくなります。
- 家族への不安:逮捕から72時間は家族であっても連絡をすることが出来ません。心配をかけてしまうことへの強いストレスが生じます。
- 社会との隔絶感:留置場にいるときは、外部と遮断された生活を強いられてしまいます。そのため孤立感や不安、隔絶感を感じやすくなります。
- 仕事への不安:会社員の方であれば、職場への連絡が出来ず、無断欠勤になってしまったり、そもそも留置場に入ったことがわかると解雇等の心配が生じてきます。自営業の方の場合は、契約した仕事をしなければいけないのに、無断で仕事をすっぽかす形になって信用を無くしたり、留置場に入ったことで、契約を打ち切られてしまったり。そのような心労が原因でストレスが引き起こされます。
留置場でできる具体的なストレス対処法
留置場という限られた環境の中でも、ストレスを軽減するためにできることはいくつかあります。
運動による解消
- 簡単な筋トレ:筋トレをすることで、ポジティブになり、かつストレス解消効果が得られると言われています。(参考:real workout 筋トレはメリットだらけ?5つのメリットと意外なデメリットもご紹介!)。腕立て伏せや腹筋、スクワットなどの自重での筋トレをすることで、リラックス効果を得ます。留置場経験者からも、筋トレをすることで精神的な安定につながったと言う話を聞いています。
- 軽い運動:室内で周りの人に迷惑にならない範囲での運動をすることで、ストレス解消を図ります。室内での足踏みや同室の人に迷惑にならない範囲でもウォーキングなどがオススメです。有酸素運動によるストレス解消効果が期待できます(参考:益田市医師会立益田地域医療センター医師会病院 有酸素運動について)。留置場経験者の体験談で、室内メンバー全員で毎日30分〜1時間のウォーキングをしたと言う話を聞きいたことがあります。ウォーキングをすることで気分が良くなり、前向きになったそうです。
- ストレッチ:ストレッチは副交感神経を活性化させてストレスを緩和してくれる効果があると言われています(参考:理学療法士が伝授する、ストレス緩和に効果的な5つのストレッチ)。ストレス解消に取り入れるといいでしょう。
- 運動時間の有効活用:留置場では15分〜20分の運動の時間が設けられています。マンションのルーフバルコニーのような狭い場所ですが、外気に触れることができ、日光浴も出来ます。日光浴はセロトニンの働きを強め、うつ病予防につながると言われています(参考:メディケア・リハビリ 訪問看護ブログ 日光浴の知られざる効果!日光浴で病気を予防しよう)。陽の光を浴びながら外気を浴び、余裕があれば短時間ですが、工夫して運動をするのもいいでしょう。留置場経験者からは、スクワットジャンプやウォーキングをしたという話を聞いています。また、他の部屋の人と話せる機会でもあるので、会話を楽しむのもいいでしょう。
読書による気分転換
- 本を読む:留置場に備え付けの本や差し入れられた本を読んだりして気を紛らわせることが出来ます。
- 新聞を読む:留置場では順番で新聞を読むことが出来ます。留置場の外で何が起きているのかと言う情報に触れるだけでも、閉塞感の脱却につながります。
- 雑誌を読む:差し入れられた雑誌を読むことで気分転換を図るのもいいでしょう。
- 勉強や自己啓発:留置場ではいいも悪いも時間があります。学びの時間を取り入れることで、将来の目標につながり、前向きな気持ちになれます。
その他の気分転換
- 手紙を書く:家族や友人に手紙を書いたりすることで、気を紛らわすことが出来るだけでなく、外部とのつながりを意識できて孤立感の防止につながります。
- 写真を見る:差し入れられた写真を見ることで、出所後の楽しみを考えることで前向きな気持ちになれたり、楽しいひと時を思い出すことで、癒しにつながります。
- 規則正しい生活を心がける:決められた時間割に従って規則正しい生活を送ることで、生活リズムを保ち、精神的な安定につながります。
- 十分な睡眠をとる:十分な睡眠をとることは、心身の健康を保つために重要です。ただし、留置場の夜は管理上の都合で完全消灯せず、減灯するだけです。眠りに差し障るくらいの明るさがあるため、不眠になる方も多くいらっしゃいます。不眠に悩まされたときは、2週間に1度くらいある医師の診察で眠剤をもらうといいでしょう。
- 弁護士に相談する:弁護士に状況を話すことで、不安や疑問を解消することができます。また、精神的なサポートを受けることも可能です。
- 警察官に相談する:体調不良や精神的に辛い場合は、遠慮せずに留置場担当の警察官に相談しましょう。適切な対応をしてくれます。
心の健康を保つコツ
留置場という特殊な環境下でも、心の健康を保つために意識できることがあります。
日課を作る
規則正しい生活を送ることは、精神的な安定に繋がります。限られた環境の中でも、自分なりの日課を作ることを意識してみましょう。
- 規則正しい生活リズム:起床時間、就寝時間をできるだけ一定に保ち、生活リズムを崩さないように心がけましょう。
- 朝の準備体操:簡単な体操やストレッチを行うことで、血行を促進し、心身のリフレッシュに繋がります。
- 読書の時間設定:読書に集中する時間を設けることで、気を紛らわせ、精神的な安定を保つことができます。
- 瞑想や深呼吸の時間:静かな時間を作り、瞑想や深呼吸を行うことで、心を落ち着かせ、リラックスすることができます。
前向きな思考の維持
ネガティブな思考に囚われがちになりますが、意識的に前向きな思考を維持することも大切です。
- 将来の計画を立てる:出所後の生活や目標について考えることで、前向きな気持ちを保つことができます。
- 反省と学びの時間に:今回の経験を反省し、今後の人生に活かすための学びの時間と捉えることで、前向きな気持ちに繋げることができます。
- 自己改善の機会として捉える:この期間を自己を見つめ直し、自己改善を図る機会と捉えることで、前向きな気持ちを維持することができます。
- 小さな目標設定:日々の生活の中で小さな目標を設定し、達成していくことで、達成感を得られ、前向きな気持ちを保つことができます。
外部からのサポート:家族や友人ができること
留置されている本人だけでなく、家族や友人も心配や不安を感じていることでしょう。外部からできるサポートは以下のとおりです。
- 手紙を送る:手紙は、留置されている人にとって大きな心の支えになります。近況を知らせたり、励ましの言葉を送ったりすることで、孤独感を和らげることができます。
- 写真を送る:楽しい思い出や日常の写真、ペットの写真などは、閉ざされた留置場の生活を忘れ、楽しい記憶を呼び起こしてくれるため、リフレッシュになると共に心の支えとなります。
- 差し入れをする: 衣類や書籍、現金などを差し入れることで、留置場での生活を少しでも快適にすることができます。ただし、差し入れできるものには制限があるので、事前に警察署に確認しましょう。
- 弁護士との連携: 弁護士と連携し、留置されている人の状況を把握したり、必要な情報を伝えたりすることで、サポートすることができます。
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弁護士の役割:精神的なサポートも含めて
弁護士は、法律的なアドバイスだけでなく、精神的なサポートも重要な役割です。
- 状況の説明と見通しの提供: 今後の捜査や裁判の流れについて説明し、見通しを示すことで、不安を軽減します。
- 取り調べのアドバイス: 取り調べにおける適切な対応方法をアドバイスすることで、不安を和らげます。
- 精神的なケア: 精神的な負担が大きい場合は、カウンセラーなどの専門家を紹介することもあります。
ストレスが長期化した場合の影響
留置場でのストレスが長期化すると、以下のような心身への影響が現れる可能性があります。
- 不眠:なかなか寝付けない、夜中に目が覚めてしまうなどの睡眠障害。
- 食欲不振:食欲がわかない、食事を摂る気になれないなどの食欲不振。
- 不安感、焦燥感:常に不安を感じたり、落ち着かなくなったりする。
- 抑うつ状態:気分が落ち込んだり、何もする気が起きなくなったりする。
- 身体症状:頭痛、腹痛、吐き気などの身体症状が現れる。
これらの症状が現れた場合は、我慢せずに弁護士や警察官に相談することが重要です。また、2週に1回ほどの頻度で医師による診察もあります。そこでも相談するようにしましょう。
出所後のケア
留置場から出所した後も、精神的な影響が残ることがあります。以下のような点に注意し、必要に応じてサポートを受けましょう。
- 十分な休息:出所後は、心身を休める時間を確保しましょう。
- 家族や友人との交流:家族や友人と過ごすことで、精神的な安定を取り戻しましょう。
- 弁護士との継続的な相談:今後の手続きや生活について、弁護士と継続的に相談することで、不安を解消することができます。
- 必要に応じて専門機関への相談:出所後も精神的な不調が続く場合は、精神科医やカウンセラーなどの専門機関に相談することを検討しましょう。
専門機関のサポート
必要に応じて、以下のような専門機関のサポートを受けることも検討しましょう。
- 精神科医、カウンセラー:精神的な不調が強い場合は、精神科医やカウンセラーの診察を受けることで、適切な治療やカウンセリングを受けることができます。弁護士を通じて紹介してもらうことも可能です。
- 精神保健福祉センター:各都道府県に設置されている精神保健福祉センターでは、精神保健に関する相談や支援を行っています。
まとめ:一人で抱え込まず、相談を
留置場での生活は、誰にとっても大きなストレスとなります。
しかし、適切な対処法を知り、周囲のサポートを受けることで、精神的な負担を軽減することができます。
一人で抱え込まず、弁護士や警察官、家族や友人に相談することが大切です。