起訴後の勾留と保釈制度:被告人勾留の期間と釈放の可能性を徹底解説
  • 「家族が逮捕され、留置場で勾留されていたが、起訴されたと連絡があった…この後どうなるのだろう?」
  • 「起訴されてもまだ留置場にいるの?」
  • 「保釈ってどうすればできるの?」
  • 「起訴後勾留(被告人勾留)って何?期限はあるの?」

家族や知人が逮捕・勾留されていると、起訴された後の流れに不安を感じるのではないでしょうか。ましてや起訴されたという連絡が来たなら、家族は更なる不安に襲われることでしょう。

この記事では、起訴後の勾留(被告人勾留)の仕組みと保釈制度について、分かりやすく徹底解説します。

起訴と起訴後の勾留(被告人勾留)とは

まず、「起訴」とは、検察官が裁判所に対して刑事裁判を申し立てることを指します。

起訴されると、被疑者は「被告人」と呼ばれる立場になります。

逮捕・勾留は、起訴前に行われる捜査のための手続きですが、起訴後も被告人の身柄拘束が必要と裁判所によって判断された場合に「被告人勾留(起訴後勾留)」が行われます。

実務上、自動的に被告人勾留(起訴後勾留)が始まります。

被告人勾留の特徴

  1. 期間:原則2か月(更新可能)
  2. 場所:起訴後しばらくは留置場で勾留され続けます(代用監獄)。再逮捕などがなければ、通常、起訴後10日程度で拘置所に移送されます。
  3. 目的:逃亡や証拠隠滅の防止、公判への欠席防止

被疑者勾留との違い

  • 被疑者勾留:最長23日間(逮捕期間含む)
  • 被告人勾留:2ヶ月(更新可能。実質的に期限無し)

被告人勾留には明確な期限がなく、裁判が終わるまで続く可能性があります。

被告人勾留の流れ

  1. 起訴決定
  2. 裁判官による勾留判断
  3. 勾留期間の更新(必要に応じて)

起訴後すぐに拘置所に移送されるわけではなく、多くの場合はしばらく(10日前後が多い)留置場に留まります。

起訴後の勾留(被告人勾留)が無駄にならない! 未決勾留日数との関連について

起訴後勾留と未決勾留日数は密接に関連しています。以下にその関係性を詳しく説明します。

起訴後勾留と未決勾留日数の関係

  1. 未決勾留日数の定義
    未決勾留日数とは、勾留された日から判決が確定する日の前日までの期間のうち、実際に勾留されていた日数を指します。
  2. 起訴後勾留の位置づけ
    起訴後勾留は未決勾留の一部であり、未決勾留日数の計算に大きく影響します。
  3. 未決勾留日数の算入
    起訴後勾留期間は、未決勾留日数として刑期に算入される可能性があります。ただし、算入されるのは起訴後の勾留日数のうち、裁判準備のために通常必要とされる期間を超える日数分のみです。

未決勾留日数の計算方法

未決勾留日数の算入は以下の計算式で予測できます.

未決勾留日数 = 起訴後の勾留日数 – (30日 + (10日 × (公判回数 – 1))

例えば、起訴後の勾留日数が120日で、公判が4回開かれた場合
120日 – (30日 + (10日 × 3)) = 60日

この場合、60日が未決勾留日数として算入される可能性があります。

注意点

  1. 起訴前の勾留日数は算入されません。
  2. 保釈中の期間は未決勾留日数に含まれません。
  3. 執行猶予判決でも未決勾留日数は算入されます。

起訴後勾留と未決勾留日数の関係を理解することは、刑事裁判において重要です。これらの知識は、被告人の権利保護や公正な裁判の実現に寄与します。

👉未決勾留日数について:詳しくはこちら >>

保釈制度について

「保釈」とは、一定の保証金を納めることで、勾留されている被告人を一時的に釈放する制度です。保釈が認められるのは、起訴後の被告人に対してのみです。

保釈の目的

推定無罪の原則に基づき、裁判までの間、被告人の社会生活への復帰を可能にすること。

保釈の条件

  1. 保釈金の納付
  2. 裁判所の許可
  3. 一定の制約が課せられる(住所制限、出頭義務など)

また、以下のいずれかに該当する場合は、保釈が認められないことがあります。

  • 死刑または無期もしくは短期1年以上懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯した場合
  • 前に死刑、無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮にあたる罪につき有罪の宣告を受けたことがある場合
  • 長期3年以上の懲役または禁固にあたる罪の常習犯である時
  • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合
  • 被告人の住所が明らかでない場合
  • 被害者その他事件の関係者又はこれらの者の親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させるおそれがあると疑うに足りる相当な理由がある場合

保釈申請のタイミング

起訴後であれば、いつでも保釈を申請することができます。ただし、認められるかどうかは裁判所の判断によります。

保釈制度の具体的な手続きについて

保釈制度の具体的な手続きは以下の流れで行われます:

  1. 保釈請求書の提出
    • 被告人、弁護人、または家族が裁判所に提出
    • 権利保釈または裁量保釈の根拠を説明し、どちらかで保釈されるように説得的に記載すること。
      ※権利保釈とは:裁判所は、保釈請求があった際には、一定の条件を除きこれを認めなければならないということ
      ※裁量保釈とは:裁判所の職権によって保釈が認めれること
  2. 必要書類の準備
    • 身元引受書
    • 住民票
    • 上申書
    • 示談書(該当する場合)
    • 嘆願書(必要に応じ。家族の釈放を望む旨を記したもの)
    • 戸籍謄本(本人・弁護士以外が申請する場合)
  3. 裁判所の審査
    • 検察官への意見聴取
    • 保釈の可否判断
  4. 保釈決定
    • 保釈金額の決定(通常150万円から250万円程度)
    • 保釈条件の設定(住居制限など)
  5. 保釈金の納付
    • 裁判所指定の方法で納付(現金納付または電子納付)
    • 弁護士を通じての納付が一般的
  6. 被告人の釈放
    • 通常、保釈金納付当日に釈放
    • 保釈請求から1〜3日後くらいが標準的スピード。
    • 土日の保釈はないケースが多い(都内は土日の保釈はなし。地方では可能な場合も多い)

保釈請求は複数回行うことが可能で、不許可の場合でも再度申請できます。なお、手続きの複雑さから、弁護士に依頼することが推奨されます。

保釈金

保釈金は近年徐々に高額化していると言われています。被告人の資産や事件の内容などによって裁判所が決定します。標準的には1事件につき150〜250万円ほどの保釈金がかかることが多いようです。事件によっては数百万円〜数千万円になることもあります。

一括で保釈金を支払うのが難しいときは、手数料はかかりますが、保釈支援協会を利用することも検討しましょう。最大500万円までの保釈金を立て替えてくれます。

保釈金は、逃亡などで被告人が出廷しなかった場合や、証拠隠滅などをした場合は、保釈金は返還されません(一部または全額)。

保釈条件に違反するとどのような罰則が適用されるの?

保釈条件に違反すると、以下のような罰則が適用される可能性があります。

  1. 保釈の取り消し:裁判所は保釈を取り消し、被告人は再び刑事施設に収容されます。
  2. 保釈保証金の没収:保釈保証金の全部または一部が没収される可能性があります。
  3. その他:まず、再度の保釈は難しくなります。また、被害者や事件関係者への威迫行為があった場合は、追加の刑事責任を問われる可能性があります。

これらの罰則は、保釈中の被告人に対して、裁判所への出頭や保釈条件の遵守を促す効果があります。保釈条件を守ることは、刑事裁判を円滑に進行させ、自身の権利を守るために重要です。

保釈が認められない場合の対策

保釈が認められない場合、以下の対策が有効です

  1. 準抗告の申立て:保釈請求が却下された場合、「準抗告」という手続きで不服を申し立てることができます。別の3人の裁判官によって判断が見直されます。
  2. 再度の保釈請求:裁判で証拠が全部提出された後など、状況の変化に応じて再度保釈を請求することで認められる可能性があります。
  3. 逃亡や証拠隠滅の恐れがないことの説明強化
    • 身元引受人のサポート体制を整える
    • 事件について反省していることを示す
    • 被害者に対して謝罪していることを証明する
  4. 検察官との面談(または電話):弁護人から検察官に対して、面接(または電話)で交渉してもらいましょう。検察官の重視するポイントを把握し、効果的な反論を準備できるメリットもある上、検察官も弁護人との論点の整理ができるため、結果的に裁判所の判断もスムーズにいきやすくなります。
  5. 裁判官との面接(または電話。可能な場合):弁護士から裁判官に対して面接(または電話)で交渉してもらいましょう(可能な場合に限る)。保釈の必要性を直接訴え、追加の条件に応じる用意があることを示します。
  6. 弁護士の見直し:経験豊富な弁護士に相談し、適切な証拠や主張を準備することで保釈の可能性が高まります。

これらの対策を組み合わせることで、保釈が認められる可能性が向上します。

起訴後の勾留(被告人勾留)と保釈の違い

起訴後の勾留と保釈には以下のような主な違いがあります:

  1. 目的
    • 起訴後の勾留(被告人勾留):被告人の逃亡や証拠隠滅を防ぐため、身柄を拘束する措置です。
    • 保釈:一定の条件下で被告人の身柄拘束を解く制度です。
  2. 期間
    • 起訴後の勾留(被告人勾留):期限がなく、裁判が終わるまで続く可能性があります。
    • 保釈:保釈が認められれば、裁判中でも身柄拘束から解放されます。
  3. 条件
    • 起訴後の勾留(被告人勾留):検察の請求に基づき裁判所が許可します。
    • 保釈:保釈金の納付や身元引受人の存在などの条件が必要です。
  4. 場所
    • 起訴後の勾留(被告人勾留):主に留置場や拘置所で行われます。
    • 保釈:保釈後は自宅などで過ごすことができます。
  5. 申請
    • 起訴後の勾留(被告人勾留):検察が請求します。
    • 保釈:被告人、弁護人、または家族が裁判所に請求できます。

起訴後の勾留は被告人の身柄を拘束する措置であるのに対し、保釈は一定の条件下でその拘束を解く制度という点が最大の違いです

起訴後の勾留(被告人勾留)中の注意点

  1. 面会や差し入れの方法が変わる可能性がある
  2. 弁護士との打ち合わせが重要になる
  3. 裁判の準備に時間を割く必要がある

まとめ

起訴後の勾留(被告人勾留)は、被疑者勾留と比べて長期化する可能性があります。

しかし、保釈制度を利用することで、一定の条件下で身柄拘束を解くことができます。

家族や知人が起訴された場合は、弁護士と相談しながら適切な対応を取ることが重要です。

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