留置場に入るとどうなる? 一日の流れを紹介

 留置場ではどのような生活を送っているのでしょうか?

「留置場に家族が勾留されている」
「犯罪を犯してしまった被疑者」
「被害を受けた被害者」
「単純にどんな所か気になる」などなど……。

 どんな立場の人でも、その実情はとても気になるものだと思います。

 本記事では留置場での1日の生活についてお話ししていきます。

 留置場経験者からのインタビューも参考に、なるべくリアルな実情をお伝えできればと思っています。

もしあなたが「ご家族様が留置場で勾留されて困っている」のなら、こちらの記事がお役に立つと思います。


留置場とは? 生活の舞台を理解する

まず、留置場について基本的な知識を押さえておきましょう。

留置場の役割

留置場は、逮捕された被疑者(容疑者)が取り調べを受けるための一時的な施設です。警察署内に設置されており、裁判所にて勾留が決定した場合、逮捕から最大23日間滞在することがあります。

留置場生活の特徴

  • 短期間の収容を想定した施設
  • 外部との接触が出来ない。
  • 必要最低限の生活環境が提供される

留置場の居室はどのようなところなのか? 詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!


留置場に入るとどうなる? 一日の基本的な流れ

 留置場では毎日同じスケジュールで生活をします。留置場での典型的な一日のスケジュールを時系列で紹介していきます。


朝:起床と点検

6:30:起床

 留置場の始まりです。減灯していた照明が一斉に点灯するとともに、警察官の指示で全員が起床し、身の回りを整えます。

  • 布団をたたむ
     敷布団は三つ折りにし、布団の上に2枚の毛布を畳んで重ね、枕は一番上に置きます。
     綺麗に畳んで重ねた寝具は、居室の外にある布団置き場まで運びます。
  • 点呼
     留置場の担当官が部屋毎に点呼に周って点呼をします。
     自分に割り当てられた番号を呼ばれるので「はい」と返事をします。
      ※留置場中で名前を呼ばれることはなく、番号で呼ばれるようになります。

6:30過ぎ:簡単な清掃

 布団を片付けた後、部屋毎に室内の清掃を行います。同室のメンバーが交代でトイレ掃除と室内の掃除機がけを交代で行うことが多いようです。
 トイレ掃除用にバケツ・雑巾・トイレ用の洗剤が渡され、居室掃除用に掃除機が渡されます。留置場の室内に電源はありませんので、室外の電源に接続された延長ケーブルが差し入れられ、それを用いて掃除機をかけます。
 長く勾留されている人であったり、留置場経験者を中心に掃除が進められます。

 地検(地方検察庁)や裁判所に行く日は、この時間帯に運動や入浴を終わらせます。


朝食と自由時間

7:00〜:朝食

 朝食は警察署の指定業者が用意したお弁当が提供されます。

  • メニューの一例:警視庁管轄では、白米、味噌汁、揚げ物などのおかずが2品、お新香2品が出てきます。調味料として醤油とソースがついてきます。
  • 栄養バランスを考慮されていますが、コンビニの弁当のおかずを半分にしたようなお弁当であり、口に合わない人が多いようです。

朝食後~8:30:自由時間 その1

この時間は自由時間です。

  • 同室のメンバーとの会話は可能です。
  • 室外に出ることはできません。
  • 留置場に備え付けてある本(官本)を借りたり、自分で持ってきた本(自本)を取りにいくことはできません。
  • メモを取ったり手紙を書いたりするは出来ません。
  • 外部との接触や電子機器の使用は出来ません。
  • とても退屈な時間なので、寝たり筋トレをしたりして過ごすことが多いようです。
  • 地検や裁判所に行く場合は、この時間帯に送迎のバスが迎えに来ます。

8:30 〜:運動や入浴の時間

 この時間は運動や入浴をする時間です。

  • 運動は平日のみ。土日はありません。
  • 運動の時間に髭を剃ったり、爪を切ることができます。
     髭剃りは警視庁管内は電動カミソリであることが多く、警察庁管内はカミソリであることが多いようです。
  • この時間に官本を借ります。
     また、自分のロッカーに書籍やメモ等を取りにいくことが出来ます。
     室内への書籍の持ち込み数には制限があります。
     3冊までのところが多いようです。
  • 入浴は警察署毎に取り扱いに差はありますが、概ね夏場は週2回、冬場は2週で3回(または週1回)の入浴日が定められています。

👉詳しくはこちら >> 留置場のお風呂事情:どんな構造で、どのように入浴できるのか徹底解説!

運動後 〜 自由時間

 運動後は自由時間となります。この時間帯に面会や取り調べがあります。

  • 何をして過ごす?
     刑務所と違い作業などはありません。
     外部との接触は禁じられていて、電話もスマホも使うことはできません。テレビやラジオもありません。
     そのため何もすることもない退屈な時間になってしまいます。
     退屈な時間を有効に過ごすため、読書・同室の人と世間話をする・昼寝をする・筋トレをする・手紙や取り調べの記録をするなど、各自工夫しながら過ごします。
  • 官本と自本
     留置場で貸してくれる本のことを官本と言います。100冊以上の書籍を用意していて、1日3冊まで借りることが出来ます。(借りられる札冊数については留置場毎に異なる場合があります)
     官本に対し、自分で持ってきたり、差し入れてもらった本のことを自本と言います。室内に持っていける本は3冊までに制限されているので、自本がある場合は、自本+官本が規定の札数を超えないようにしなくてはなりません。(借りられる札冊数については留置場毎に異なる場合があります)
  • 午前の面会について
     午前の面会は10時〜昼食前までです。
     1回の面会時間は15〜20分に制限されています。
     情報漏洩などを防止する奥的で留置場の担当者の立ち合いがあります。
  • 午前の取り調べについて
     概ね10時過ぎ〜お昼前まで行われます。

昼食と午後の活動

12:00頃:昼食

昼食も朝食と同様、業者が提供します。

  • メニュー例
     警視庁管内では、コッペパン2個・ジャム2つ・マーガリン一つ・コロッケなどのおかず1品・ジュースが出てきます。調味料として醤油とソースがついてきます。
  • 自弁
     お金を支払うことで、外部のお弁当やお菓子を頼むことができます。
     お弁当の場合、費用は600〜800円ほどかかります。
     注文可能な品目は各警察署毎に異なります。
     唐揚げ弁当やトンカツ弁当などが頼め、お菓子はどら焼きなどが頼めます。
  • 音楽
     基本的に留置場にBGMはなく無音です。
     勾留によるストレス軽減のため、昼食後10分ほどポップスの懐メロを中心とした音楽が流れます。
     昼食後に流れるBGMを楽しみにしている人も多くいます。

昼食後 ~ 自由時間

 午後も、面会や取り調べがある場合があります。面会や取り調べがない場合、自由時間として使えます。午前と同じで、取り調べや面会がないとすることのない退屈な時間となります。午前に引き続き読書・世間話・昼寝・筋トレ・手紙や記録を書いて時間を過ごします。


夕食と夜の準備

17:00〜:夕食

 夕食は昼食と同様に外部の業者によるお弁当が提供されます。

  • :警視庁管轄では、ご飯・揚げ物中心のおかず4品・お新香2品・お茶が提供されます。調味料として醤油とソースがついてきます。

夕食後 :自由時間

 夕食後は自由時間です。日中の自由時間と同じように、読書などをして時間を過ごします。


夜:就寝と消灯

21:00:就寝

 消灯時間は厳守です。

  • 夜間は自殺防止などの管理上の都合で、照明が完全に落ちることはありません。部屋内が薄暗い照明に切り替えられます。
  • トイレの使用は可能です、暗黙の了解で皆静かに使用しています。

取り調べについて

取り調べ:10:0020:00(昼食・夕食の時間帯を除く)

 留置場の主目的は捜査のための勾留であり、取り調べが行われることがあります。

  • 取り調べの内容
     事件の詳細や証拠の確認します。
     その供述を基に供述調書を作成します。
  • 時間
     昼食や夕食は留置場の部屋で取れるよう、取り調べを切り上げることと定められています。
     取り調べは昼食や夕食の直前まで行うことがあります。
     夕食後の取り調べは基本的にはありませんが、刑事が必要と判断した場合は夕食後も取り調べが行われます。

 留置場の担当者に「接見希望」を出すことで、弁護士と面会出来ます。弁護士から被疑者に会いに来ることもあります。被疑者は弁護士と立会人なくして接見できるという、刑事訴訟法に定められた「接見交通権」があるため、警察官は同席しません


弁護士との接見について

弁護士との接見(面会):24時間、365日可能

  • 弁護士接見の時間に制限はありません。
    24時間365日いつでも接見可能です。
  • 弁護士との接見の際に警察官の同席はありません。
    なぜなら、被疑者は弁護士と立会人なくして接見できるという、刑事訴訟法に定められた「接見交通権」を持っているからです。
    もちろん盗聴されることはありません。
  • 家族や職場への連絡は弁護士を通じて行うことしか出来ません
    接見の前に伝言をする内容や連絡先をまとめておくと良いでしょう。
  • 家賃の支払いなどが必要な場合や留置場で使う現金が無い時に、キャッシュカードを渡すなどして、支払いやATMから現金を引き出してもらうことなどの依頼が可能です。
    留置場で全くお金を使わないで生活することは可能ですが、自弁・便箋・切手などの購入には現金が必要です。
    キャッシュカードがあり、銀行に残高はあるけれど、現金が無い。または支払いが必要だけど対応できない。そういう時は弁護士に依頼するといいでしょう。

もし弁護士に知り合いや伝手が無くて困っているなら、この記事をご覧ください!


留置場生活でのルールと制約

面会や差し入れの制限

  • 面会
     接見禁止がついて無ければ誰でも可能。
     平日のみ。1日1回、1回15〜20分の制限がある。
     情報漏洩等への対策として留置場の警察官の立ち会いがつく。
     接見禁止がついている場合は、裁判所より接見禁止の除外認定されている者のみ面会が可能。
  • 差し入れ
     接見禁止がついていなければ誰でも差し入れすることが可能。
     接見禁止がついている場合は、弁護士や接見禁止の除外を受けた近親者のみが許可される。
     留置場毎に取り扱いに微妙に差がある。
     食べ物の差し入れは不可。
     現金の差し入れは金額の制限がある(3万円くらいが多い)。
     書籍の差し入れは一日3〜5冊の制限があることが多い。
     上着はトレーナーなどのボタンの無いものなら可能。
     ズボンを差し入れる場合は、チャックがあるものは不可。ジャージやスウェットの場合は、紐を抜き、紐の穴を塞いで差し入れる必要がある。
     ハンカチは小さいもの(縦横十五センチ以下のもの)なら可能。
     靴下は踵までも短いものなら可能。
     差し入れに当たっては、留置場の担当警察官の確認・許可が必要。

差し入れについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです!

持ち込み物の制限

 留置場内に持ち込めるものは許可された下着・着衣・書籍・便箋・記録用紙等の日用品に限られています。
 現金や留置場に持ち込めないもの(例:逮捕時の普段着)などは別室にて預かっていてくれています。


留置場での生活の心理的影響

 長期間の拘束は、精神的な負担を伴います。特に以下のような影響が考えられます。

  • 孤独感
     外部との接触が制限されるため、孤立感を抱くことが多い。
  • 緊張感
     取り調べや今後の裁判を控えた不安が重なる。
  • 無力感
     トラブルが発生しても関係各所に連絡が取れず、自ら問題解決することができない。その結果強い無力感を覚えるケースがある。

     これらが強くなると、拘禁症状に発展することもあります。
     拘禁症状についてはまた別に触れていきます。

まとめ

留置場は規則的なスケジュールの中で生活をしていきます。自由が制限される環境は多くの精神的負担を伴います。本記事を通じて、留置場ではどのような生活を送っているのか? その実際を知る一助になれば幸いです。