逮捕され留置場に勾留されると、生活環境の変化から様々な不便を感じることがあります。
その中でも歯磨きを含む口腔ケアは、普段と同じように行うのが難しく、歯周病のリスクが高まることが懸念されます。
- 留置場では歯磨き粉や歯ブラシは使えるのか?
- 歯周病は進行しやすいのか?
- 何か対策はあるのか?
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
この記事では留置場における歯磨き事情を詳しく解説し、歯周病のリスクと対策についてご紹介します。
留置場での歯磨き事情:制限と現状
留置場では持ち込めるものに制限があるため、歯磨き環境も普段とは異なります。
- 歯ブラシ: 支給されるものと、留置場での購入品とに別れますが、使い慣れたものを持参、または差し入れしてもらうことは出来ません。
- 歯磨き粉:留置場に備え付けのものを使うか、留置場で購入するしかありません。持ち込みや差し入れは出来ません。
- 歯磨きの頻度:基本的に起床後と就寝前しか歯磨き出来ません。食後の歯磨きが出来ないことが欠点です。
- うがい:留置場の室内に洗面台はありません。基本的には朝晩の歯磨きの時しかうがい出来ません。
- デンタルフロスや歯間ブラシ:持ち込み出来ません。
これらの制限により、十分な口腔ケアを行うのが難しい状況と言えます。
留置場で歯周病が進行しやすい理由
留置場では、以下の要因から歯周病が進行しやすいと考えられます。
- 十分な歯磨きができない:食後の歯磨きが出来ないことに加え、持ち込める歯磨き用具にも制限があるため、十分な歯磨きができません。歯垢が蓄積しやすいため、歯周病が進行しやすいと言えます。
- ストレス: 環境の変化や今後の見通しが立たないことなどから、精神的なストレスを感じやすく、免疫力が低下し、歯周病菌が繁殖しやすくなります。
- 食生活の変化: 食事の内容が変化することで、口腔内の環境が変化し、歯周病菌が繁殖しやすくなる可能性があります。
- 歯科受診の困難さ: 留置場内で歯科を受診するのは難しく、早期発見・早期治療が遅れる可能性があります。留置場の裏ルールですが、歯科受診は概ね抜歯する時に限られます。
これらの要因が重なることで、留置場では歯周病が進行しやすい状況と言えます。
歯周病の進行を抑えるための対策
留置場という限られた環境の中でも、歯周病の進行を抑えるためにできることはいくつかあります。
- 丁寧な歯磨き:朝晩だけという限られたタイミングですが、できる限り丁寧に歯を磨きましょう。特に、歯と歯茎の境目や奥歯など、磨き残しが多い部分を意識して磨くことが大切です。また、支給される歯ブラシ・歯磨きよりも、日用品で購入できる物の方が良いものなので、予算に余裕があればそれぞれの購入を検討しましょう。
- うがいの励行:食後は食事の際にもらえる水でうがいすると良いでしょう。朝晩はお茶が配られますので、そのお茶でうがいすると殺菌作用も期待できます。また、洗面所はありませんが、うがいするためにトイレの手洗いの水を利用したり、留置場の警察官に水を請求してうがいをするという方法を取ることが出来ます(この際、うがいのために水が欲しいというと嫌がられることがあります)。こまめにうがいをして、口腔内を清潔に保ちましょう。
- 規則正しい生活:規則正しい生活を送ることで、免疫力の低下を防ぎ、歯周病菌の繁殖を抑える効果が期待できます。
出所後のケア:歯科受診を推奨
留置場から出所した後は、できるだけ早く歯科を受診し、口腔内の状態をチェックしてもらうことをお勧めします。
- 歯垢・歯石の除去:歯科医院で歯垢・歯石を除去してもらうことで、歯周病の進行を抑えることができます。
- 歯周病の検査と治療:必要に応じて、歯周病の検査や治療を受けることで、歯周病の悪化を防ぐことができます。
- 正しい歯磨き指導:歯科衛生士から正しい歯磨き方法の指導を受けることで、今後の口腔ケアに役立てることができます。
留置場経験者による体験談
留置場に60日間入った際の歯周病の進行具合をインタビューできましたので、記載させて頂きます。
- 留置場前の奥歯の歯周ポケットの深さ:2〜3mm(出血なし)
- 留置場後の奥歯の歯周ポケットの深さ:7〜9mm(出血あり)
この方は親知らずの部分に膿も溜まってしまい、留置場から出た後、抜歯することになりました。
指数ポケットの深さについては厚生労働省では以下のように説明しています。
健康な歯肉の状態であれば3mm以内ですが、4~5mmのだと初期の歯周病、6mm以上で重度の進行した歯周病と判断します。重度の歯周病だと歯を支えている歯槽骨が溶けてなくなっていることを示しています。また探針を抜くと歯周ポケットから出血がおこることもみられます。容易に出血するということは、その歯肉には炎症があるということですので、プラークや歯石の除去を徹底的に行う必要があります。
まとめ:できることを行い、出所後のケアも重要
留置場では、環境的な要因から歯周病のリスクが高まります。
しかし、できる範囲で丁寧な歯磨きやうがいを励行し、外部からのサポートを活用することで、進行を抑えることは可能です。
出所後は必ず歯科を受診し、適切なケアを行うようにしましょう。