留置場で勾留された時に行く、地検(地方検察庁)ってどんなところ?

逮捕されて留置場に勾留されることになった場合、その後の手続きで「地検(地方検察庁)」に送致されることになります。

しかし、地検とは一体どんな場所で、何をする所なのか、一般の方には馴染みが薄く、不安に感じる方も多いでしょう。

この記事では、留置場と地検の関係、地検で行われること、そして地検に関するよくある疑問について、わかりやすく解説していきます。


地検(地方検察庁)とは何か?

地方検察庁は、刑事事件の捜査や起訴を行う法務省の機関です。全国の各都道府県庁所在地などに設置されており、警察から送致された事件の処理を行います。

地検(地方検察庁)は、検察官が所属する官庁です。検察官は、犯罪の捜査、起訴・不起訴の決定、裁判での立証など、刑事事件において重要な役割を担っています。

地検とは、地方裁判所に犯罪捜査や刑事訴追を担当する検察庁のことです。全国に設置された検察庁の一部であり、各地域の事件を取り扱います。地検の主な役割は次のとおりです:

地検の基本的な役割

地方検察庁は、刑事事件の捜査や起訴を行う法務省の機関です。全国の各都道府県庁所在地などに設置されており、警察から送致された事件の処理を行います。

地検の主な役割は以下の通りです。

  • 捜査:警察からの送検を受けた事件について、さらに捜査を行います。被疑者や関係者の取り調べ、証拠の収集・分析などを行います。
  • 起訴・不起訴の決定:捜査の結果に基づき、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。
  • 公判:裁判において、検察官は被告人の有罪を立証する役割を担います。
  • 刑の執行:裁判で有罪判決が確定した場合、刑の執行を監督します。

地検の構造

検察庁は、規模によって「最高検察庁」「高等検察庁」「地方検察庁」「区検察庁」と分かれています。それぞれ、名前の通り、「最高裁判所」「高等裁判所」「地方裁判所」「簡易裁判所」に対応します。

留置場で勾留された人が送られるのは「地方検察庁」です。


留置場と地検の関係

逮捕から起訴、裁判に至るまで、地検は全てのプロセスに関与します。

まずは逮捕後の流れを簡単に見ていきましょう。

  1. 逮捕: 警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を拘束されます。
  2. 送致: 逮捕後48時間以内に、事件は検察に送られます(送致または送検)。この時点で、被疑者は地検に身柄を移されるわけではありません。
  3. 検察官の取り調べ: 送検後、検察官が被疑者を取り調べ、勾留の必要性を判断します。
  4. 勾留請求: 検察官が勾留が必要と判断した場合、裁判所に勾留を請求します。
  5. 勾留決定: 裁判官が勾留を認めると、原則10日間、最長20日間、留置場での勾留が続きます。
  6. 起訴・不起訴の決定: 勾留期間中に、検察官は起訴(裁判にかける)か不起訴(裁判にかけない)かを決定します。

この流れの中で、実際の捜査や取り調べは警察が担いますが、勾留請求や起訴を判断する立場にある地検は、実質捜査の方向性の決定権を持っています。そのため、全体への影響力が強い組織です。

被疑者が地検に連れて行かれるのは、地検に所属する検察官の取り調べを受ける時です。

では逮捕から検察に「送致」されて勾留が決定するまでの流れをもう少し詳しく見ていきましょう!

逮捕〜留置場で勾留されるまで

逮捕は前触れなく行われます。ある日突然、逮捕状を持った警察官がやってきて逮捕されます。

逮捕された後は警察署に行き、取り調べを受けることになります。

そこで、「身上調書」「弁解録取書」を作成します。それらは48時間以内に被疑者の身柄と共に検察に送致されます。

調書だけでなく指紋などの生体情報や写真なども撮り、その後留置場で勾留されます。

逮捕と留置場についてもっと詳しく知りたい方は下の記事をご覧ください!

検察への送致:逮捕後48時間以内

送致(送検)とは何か?

送致とは、「関係書類や証拠物を、被疑者の身柄と併せて検察官に送致(出典:IMIDAS よくわかる裁判員制度の基本用語)」することです。

法律では、逮捕後48時間以内に送致しなければならないと定められています。

※送検は送致と同じ意味ですが、マスコミ報道で用いられる表現です。

警察から地検に行く際は、基本的には警察のバスを使って行くことになります。稀にワンボックスカーなどに乗り、単独で送迎になる場合もあります。単独送は体調面に不安のあるケースや、有名人などで周囲とのトラブルを避ける目的で選択されることがあります。

  • 警察から検察官へ:被疑者は警察の留置場で勾留された後、地検に送致されます。
  • 事件資料も送られる:警察が集めた証拠や供述調書も一緒に送られます。
  • 警察から検察への移動:警察のバスで地検に送致する。稀に単独で送致される。

送致後:検察官による取り調べ

検察に送致後、検察官が被疑者を取り調べます。

取り調べでは、警察の調書をもとに、罪状の認否、事件に関する事情や動機等を聞かれます。

警察での取り調べと同様に、供述調書が作成されます。

検察が更なる取り調べが必要と判断した場合、裁判所に対して勾留請求24時間以内に裁判所での勾留判断が行われます。

今までの話をまとめると以下のようになります。

  • 検察官による事情聴取(供述の確認):警察での調書を元に取り調べを行います。供述と矛盾がないか確認されます。
  • 容疑事実の確認:罪状認否・事件の動機などを改めて聞かれます。
  • 供述調書の作成:検察官が口頭で調書を読み上げ、被疑者と共に内容を確認しながら調書を作成します。
  • 勾留延長の申請:検察官は、さらなる捜査が必要と判断した場合、24時間以内に裁判所に勾留延長を申請します。

裁判所での勾留判断:勾留請求後24時間以内

検察官による勾留の請求を裁判所が認めた場合、被疑者は最長20日間留置場に勾留されます。

地検による起訴・不起訴の判断

地検にいる検察官が、捜査によって被疑者を起訴するか不起訴にするどうかを決定します。この判断は、事件の証拠や被疑者の様子、過去の前科前歴などを総合的に考慮して行われます。

起訴とは?

起訴とは、被疑者を裁判にかけることです。地検の検察官によって起訴された場合、裁判所での審理が行われ、有罪か無罪かが判断されます。

略式起訴:略式起訴は正式な裁判ではありません。簡易裁判所に対して書面の手続きをへて罰金刑などを求める者のことを言います。法務省では略式起訴を以下のように説明しています。

被疑者の同意を得て,公判を開かず,簡易裁判所が書面審理で刑を言い渡す簡易な刑事手続によってなされる裁判を請求する起訴で,一定額以下の罰金又は科料の刑を科す場合に限ります。

出典:法務省 刑事事件フローチャート

正式起訴:検察が裁判所に対して裁判を請求することを言います。

公訴を提起することを起訴といいます。起訴は検察官が裁判所に対し,特定の刑事事件について審判を求める意思表示を内容とする訴訟行為であって,検察官が行う重要な処分です。

出典:法務省 刑事事件フローチャート

2. 不起訴とは?

不起訴とは、地検の検察官の判断で、裁判にかけずに被疑者を釈放することです。

法務省によると、不起訴は以下のように説明されています。

検察官の行う終局処分のうち,公訴を提起しない処分を不起訴処分といいます。

出典:法務省 刑事事件フローチャート

以下のような理由で不起訴になることがあります。

  • 証拠不十分:有罪を立証するだけの証拠がない。
  • 起訴猶予:被疑者の反省や情状酌量の余地が認められる。

地検での取り調べに備えるための注意点

被疑者として地検に送られた場合、どのように対応するべきかを知ることは重要です。以下に、取り調べを受ける際のポイントをまとめます。

弁護士と相談する

取り調べ前に弁護士と話し合うことで、適切な対応ができます。

弁護士は法的アドバイスや精神的サポートを提供してくれるだけでなく、家族や職場などへの連絡調整や、示談交渉の窓口にもなってくれます。

特に逮捕から72時間は外部から完全に遮断されてしまうので、逮捕後速やかに弁護士と連絡を取る必要があります。

もし弁護士に伝手がない場合は、「当番弁護士」を利用することができます。詳しくは下の記事をご覧ください!

黙秘権を使うか検討する

刑事によるお取り調べの際にも、検事調べの際にも被疑者には黙秘権があります。自分に不利になることや話したくないことについては黙秘することが可能です。

ただ、「黙秘をする・しない」についてだったり、どの部分で黙秘するのか等、あらかじめ取り調べに対する全体の方向性を弁護士と検討した上で黙秘権を行使するのが望ましいでしょう。

供述の一貫性を保つ

警察と検察で供述内容が矛盾すると、信頼性が低下する可能性があります。供述の矛盾を突かれ、取り調べが増えたり厳しくなる恐れもあります。真実を話すことが最善です。

とはいえ、逮捕や留置場での勾留による不安、記憶が曖昧などで供述がブレてしまうことも十分あり得ます。弁護士と相談することで安心して取り調べに行けます。逮捕後早期の接見をすべきでしょう。

権利がある供述調書の内容をよく確認

体調不良時は申し出ること

地検に行く乗り合いのバスは、いくつか警察署を回ってから地検に行きます。そのため、長いと2時間以上バスに乗り続けます。さらに被疑者は両手に手錠を嵌められた上に、ロープで拘束されています。

そのような状況で地検に行きますし、地検でも両手の手錠を嵌めたまま過ごします。

体調を崩しやすい状況と言えますので、体調が悪くなったら早めに刑務官に連絡しましょう。取り調べ中に体調が悪くなった際は検事にその旨申し出ましょう。


地検と裁判所の違い

地検は起訴するかどうかを判断する場所であり、裁判所とは異なります。裁判所は、起訴された事件を審理し、有罪か無罪かを決定します。


地検に関するまとめ

地検は、犯罪捜査や刑事訴追の重要な役割を担う場所あり、検察官が所属しています。

留置場から地検への送致後、検察官によって勾留請求が行われます。

勾留延長決定後は、警察による取り調べをベースに、定期的に地検に行き、検事からも取り調べを受けることになります。

最終的に検察官が起訴・不起訴の判断が行われます。

このように、地検での取り調べは「起訴・不起訴」の決定に大きく影響するため、弁護士と相談しながら適切に対応することが重要です。

被疑者やその家族にとっては、精神的にも法的にも大きな影響を与える場であるため、対応の仕方を理解しておくことが重要です。

この記事を通じて、地検についての理解が深まり、適切な対応ができる助けになれば幸いです。